第43話 心の扉



 回復要員が突発的なトラブルがつきものであるダンジョンを一人で放浪って、馬鹿じゃないの?


 自分のためなら、まだ分かる。

 石化して動けなくなるのは退屈だろうし、心情的に嫌だろうから、多少の無茶をしてしまうのは。


 でも、それが他人のため?


 はっきり言ってそれってさぁ。


「君、頭おかしいんじゃないの?」

「ニルバさん?」


 一度蓋をあけてしまった心の扉は、容易には閉まってくれない。


「ばか、ばかでしょ。ばかだろ。ばかだったんだろ。だからそういう事ができるんだよ。平然と、普通に」

「あの……」


 ほら、シロナ戸惑ってるし。

 出会ったばかりの、大して仲良しでもない相手に何言っちゃってんの?

 なんかもう引いちゃってんじゃん。

 

「自分より他人が大事、他の人を信じる? 人のためだったら、自分の身を犠牲にできるの? それってさ、ただの馬鹿なだけだろ。自分の言動に酔っちゃってるだけでしょ。あーあ、気持ち悪い。何それ。結局自分のためじゃん。笑わせんなよ」


 シロナは僕の顔を見ながら、何度か言葉を言いかけるけど、何も出てこないようだ。

 きっと、こいついきなりイミフなんですけど、みたいに思ってるんだろうな。

 いや、さすがにシロナはそれはないか。

 ない、よね?

 どうだろう。


 とにかく僕の言葉の勢いはとまらない。


「皆がみんなそうやって純粋に行動できたら、平和だろうね。さぞかし笑いが絶えない素晴らしい世界になってただろうね。アリッサの奴だって、事情を話して僕に頼れば良かったのに、今も大人しくしてればいいのに。町の中走り回っちゃって。そんなザマで、プレイヤーの為に情報収集してんの? 皆まとめて馬鹿だよ、くそったれ」


 知ってた?

 僕って結構口が悪いんだ。

 うっかりするとすぐこれだからさ。

 だから、あんまり人と喋らないようにしてるんだよね。


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