第28話 ぐだぐた探してる



「いくらあんな性格のシロナでも、さすがにそれは可愛そうすぎるか。まあ、人として」


 自分の意識があるのに動けない状態が何日も続いたら、かなりのストレスになるだろう。


 そう、僕は人として心配してるだけなのだ。

 特に親しくない人でも、目の前で具合悪そうにしてたら、ちょっと気になっちゃうじゃん。

 そんな感じ。


 けど、ほんと見つからないな。

 あれからもうちょっと時間をかけて見回ってるけど、でも水晶草のすの字の気配すらない。


 で、そうやってぐだぐだしてる内に、夕焼け空が綺麗な時間になってしまった。


「あー、もー、どうすんのさ僕。どうすんの」


 往生際悪く不毛な散策をつづけながら、苛立ち交じりの言葉を吐き続ける。

 聞いてる人なんていないし、意味なんてないけど。

 いや、むしり誰もいないから延々と喋ってられるのか。


「…で、さ。だから……な、わけ。隠しスポットならこの先に……」


 そんな風にしていると、遠くから女性の声が聞こえて来た。

 なんかムカッとする声だ。

 そんで、どっかで聞いた事があるような声。


 何だろうな、つい最近こんな声聞いた気がするんだけどな。


 とにかく声のする方へと向かっていく。


 距離が近くにつれて、段々と聞こえてくる言葉も内容もはっきりしてきた。


 ああ、思い出した。

 これ、間違いない、シロナに難癖つけてきたおばさんの声だ。


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