第22話 竜の姿なんて見えないんだけど



 しかし、竜の姿なんてどこにも見えないじゃないか。

 アリッサの奴、でたらめ喋ったのか。


 いやでも、曲がりなりにも情報のやり取りでお金を得てるわけだし、すぐにばれるような嘘を何の意味もなつくわけない。


 だとしたら、住み着いてる竜は一体町のどこにいるんだろう。


 ざっと見まわしてみても、それらしい影は見当たらない。

 町の中は至って普通、見たところ平穏の見本のような光景しかない。


「はぁー」

「おう、どうした兄ちゃん、ため息なんてついたら幸せが逃げちまうぜ」

「いえ、ちょっとうざい仲間の事について考えてただけなんで」


 町を各所を移動するなら、歩いて行くより水路を進むゴンドラに乗った方がいい。

 というわけで、利用したゴンドラの上でため息ついてたら、船頭のおっさんにはなしかけられてしまった。

 面倒くさいな、そっとしておいてくれないかな。


「はっはっは、うっとおしいと考えられるだけ幸せなもんだ。本当に可哀想な奴に絡んでくる奴なんていねぇんだからな」


 ほら、そうやってすぐ要らないお世話してくるし。

 だから年上は好きじゃないんだよ。

 まあ、かといって年下の子供なんて嫌いだし、同年代でもアリッサみたいなのがいるから嫌なんだけど……。


「お、今日は珍しく雨が降って来るみたいだな」


 しかし、空を見上げて行ったその発言には少なからず興味が湧いたので、話しかけていた。


「何で分かったんですか?」


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