第14話 メリットのない距離感



「あ、あの……」


 並んで歩いていると、隣から遠慮がちな声が聞こえて来た。

 シロナが何か、言いたそうな顔をしている。

 たぶんさっきの事についてだろう。


 でも、僕はあえてその先を聞くまいと、言葉を遮った。


「何? 別に無理矢理に理由とか君の個人情報とか、聞きたいとか思わないから」

「え?」

「というか、皆が皆他人に興味があるとか、知りたいだなんて、そういうこと思わないでくれる? 僕は別に君の事情なんてこれっぽっちも興味ないし、首を突っ込む気もないから」

「えっと、そういう意味じゃ……」


 シロナは慌てて弁解を始める。


「違うんです、私はただニルバさんに隠し事とかしたくないと思って」


 別に、つい先日会ったばかりの僕に嫌われる事なんて、気にしなくてもいいだろうに。


 そんなだから付け込まれるんだよ、君は。


 僕は、自分でも刺々しいなと思いながら言葉を吐き出す。


「助けて欲しいとか思わない方が良いよ」

「……え?」

「人の助けなんて当てにしないないがいい。そうじゃなくても、悩みを聞いてもらうだけで楽になるかも……とか、そういうのも考えない方が良い。人に相談したって変な問題増やすだけでしょ? 自分一人で悩んで解決していった方が、ずっと楽だ」

「そんな事……」


 シロナは不満そうだ。


 けど、それが僕の正直な気持ちだからしょうがない。


「ニルバさんは、ずっとそうやって生きてきたんですか?」


 疑問を形を成したそれには、すがるような感情が含まれていたけれど無視した。

 僕がシロナと同じ意見である事にメリットを、あまり感じられなかったからだ。


「そうだ。生憎と今日までそれで、ちゃんと生きて来られてるしね」


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