1.10 事前準備3
吉岡と桐谷は中古で購入してきたワイヤレスファイアウォールの構築とスイッチをつないで簡易なネットワークインフラの構築を進める。
首藤と喜連川は構築続けていたWebサイト"C3"の脆弱性診断と最終パッチ適応を行っている。
加川はバッグからパソコン以外にHMDとハンドコントローラー、つるの部分がやや太いメガネ、ワイヤレスイヤホンマイクを取り出した。HMDを装着して、ソフトウェアを立ち上げた。パソコンのモニターには金髪の髪に黒いゴシックなドレス、ハートの眼帯をした美少女キャラが表れ、作業している吉岡と桐谷のほうに向かって手を振ってみせた。吉岡が笑って手を振り返す。
「いやー、めっさ楽しくなってきた。」
桐谷もモニターの美少女キャラを見て、これがWebサイト"C3"から配信されるのかということを理解した。
安田も同様にHMDとハンドコントローラーを取り出した。パソコンと先ほどのBIM用センサーをいじりながら、マンションの3Dモデリングを開始した。時折、HMDを装着しながら、グラフィックを確認している。
吉岡と桐谷の作業が完了したところで、他のメンバーにWi-Fiの接続方法、自前でクラウド上に構築したプロキシと匿名プロキシの利用方法を簡単に説明した。
プロキシとは、Proxyと表記する。意味は「代理」で、インターネット上のWebサイト等へのアクセスを代理で行ってくれるサーバを意味する。匿名プロキシはプロキシを多段に踏むことで、身バレを困難にさせるものである。ネットワーク接続で必要となるTCP/IP通信における接続経路の匿名化を実現するための規格にThe Onion Router(略:
「この場所で僕らが各端末を持ち出すことがなければ、Wi-Fiを乗っ取られるようなこともほとんど考えにくいと思います。ファイアウォールの管理ポートもここから接続するか、万が一、ここに何者かがやってくるようなことがあった場合は、
桐谷がボディーランゲージを交えて説明する。
「まあ、普通にここを退去するときにも使えるけど、とりあえず念には念を入れておいてええやろ。」
吉岡がそう説明した後、構成管理サーバとWebサイト"C3"との連携について首藤と喜連川と話し始めた。
桐谷はひとまずやることを一通り終えたので、安田の元に近寄る。
「今は何をやっているんですか?」
「あー、このマンションの外観を3Dモデル化しおわったところだ。」
カーソルをグリグリ回して、マンションの3Dモデルを回す安田の仕事をみて、自分とは違うハッカーもいるんだと桐谷は感心した。
「拡大すると内観も表示できるようにするんだが、まあ、それは明日にでも他のメンバーと内覧するときにでも、データを取得するさ。」
「へー、すごいですね。こんなことができるのか。」
「ああ、内観もできあがったら、人感センサーや監視カメラをどこに設置するか考えるさ。皆には後ほどそこで協力してもらおうと思いますよ。」
こんなにも頼もしい人が味方でいるなんて、そう思った桐谷はぐっと唾を飲み込んだ。本当に使うシーンがなければもちろん良いが、可視化されたセキュリティツールとして想像したこともない面白いものになると思った。
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