1.8 事前準備1
湾岸沿いの指定されたマンションについた一行は外から見上げた。外壁はスプレー缶で吹き付けられた、スプレーアートにもなっていない、落書きがところどころに散見される。落書きがなければ白く輝くマンションに違いないだろう。他のタワーマンションと比べると見劣りはするが、ずんぐりむっくりした形である。
マンションの1階には外からバーらしきものが見えるが、看板は点灯していない。外壁にはやはり落書きがされている。
「今はバーはやってはいない。例の芸能人が、あの場で麻薬売買を行っていたもんだから、店は閉店してしまってんねん。」
「へぇ、残念な。」
首藤はお酒が好きで、たまに仕事帰りに一人でも飲みに歩くことがある。
マンションの建物を一周、ゆっくりと談話しながら歩く。湾側はランニング用のゴムチップが敷き詰められた道路になっている。街路樹も立っていてその周りは芝生になっている。それ以外はアスファルトの道路になっている。
歩きながら、加川はカメラを取り出して撮影している。マンションのいたるところから、道路、湾岸側なども撮影する。
「あはーっ!撮影楽しいっす!ここの立地、超いいっすね!」
加川はずっとはしゃぎながら撮影をする。
対照的に安田は小型の金属製の棒を取り出してブツブツいいながらスマートフォンの画面をみながら、ゆっくりと歩く。桐谷がその行動を気になり質問した。
「何をしているんですか?」
「あー、これね。このマンションの3次元モデリングを採取するために計測しているんだ。俺が開発した小型のBIM用センサーさ。これで取得できたデータを地図データと連携すると、マンションを仮想空間上に構築することができる。
BIMとは、Building Infomation Modelingの略で、3次元のリアルタイム動的モデリングソフトウェアを使用し、建物の形状、空間情報、地理情報、建物部材の情報が含まれたモデルを生成し、建物の設計や建物構築の際の工程管理に使う。
「へー!そんなことが!」
他のメンバーが驚く。すでに建物のリアルな情報をハックしてみせる安田の行動をみて、桐谷が武者震いしてみせた。桐谷だけではなく、気持ちとしては全員がそう思っているだろう。
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