喪失

あなたを愛した時、すでにうしなうことを考えていた。

それが怖かった。

愛してみる、するとうしなうことを数えはじめる。

星すらも死ぬのよ、

望遠鏡みたいなあなたの瞳、

僕を通り過ぎてどこまでもささやき続けた。


ねえ、今どこにいる?


ガラスの箱の中で次第に意識が遠のいてゆく……


ねえ、今どこにいる?


力の抜けた肉体が、万華鏡の残像みたいにガラスに映ってる。

なにがフィジカルで、

なにがリアルなのか、

もうわかんなくなった。


ねえ、今どこにいる?


形があった頃のあの肌触りを思い出すんだ。

寂しい、とても……

でも、これは新しくない感情、

最初のはじめから、ずっと胸の中に潜んでいた。


そう、愛した初めから、この寂しさは満たされずに存在していた。

愛は満たすことなどしない、

それはいつもうしなことを恐れる。


もう一度、撫でたい。


ねえ?

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試行される詩片のための集成 トーヤ @toya-ryuji

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