涛眩く白

漕げ漕げ、進め!

涛眩なみくるめく白


アルベドの高鳴りは蒼暗い波浪の頂に猛る焔となって燃え上がり

熱された銀の鱗を白々と払い落とす。


糢糊もこなる海の被膜へと帰する黙した花弁はなびらの雨

消えない斑紋まだらもんを成す。


長い髪をたなびかせ、砂州を横切るアルゴーン号。

舳先が切るみどりの眸が流れてゆく

遠くの島影を目指して……


「迫るまくれた波頭に抗うな」

唄うセイレーン達の声へ微睡まどろみを傾けてはならない


漕げ漕げ、進め!

涛眩なみくるめく白


煮えて沸いた幾筋もの銀の手で頬骨を打たれても

櫂から手を離してはならない


漕げ漕げ、進め!

涛眩なみくるめく白


遠くの島影を目指して……


「迫るまくれた波頭に抗うな」

唄うセイレーン達の声へ微睡まどろみを傾けてはならない


遠吠えの海を抜けて、金雀児えにしだの深林がむらなすあの島へと帰るのだ船人ふなびとどもよ!


連なる凱旋行列の燃える篝火のように四肢の隅々にまで点火せよ

鸞々らんらんと輝く瞳で昏い水平線を凝視せよ

ここで視線を落としてはならない


漕げ漕げ、進め!

涛眩なみくるめく白




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