第3話
「十六時までは店にいます。
行き道、大変なことがあれば迎えに行きますので無理せずに。」
僕はいい人に恵まれているようだ。
僕の耳は事実になった。
歩いて行くと結構時間がかかる。
いつもは車で通勤していた為、気づかなかった。
今日は曇っているが涼しくはない。
梅雨がこの空を侵食しているようだ。
気圧が重く、風が強い。
風が、僕の前髪を触って頬に抜けていく。
髪伸びたか。最後に行ったのはいつだろうか。いや、長らく行ってなかった訳では無い。髪の毛の長さが過敏に気になるのは、それ以外に気にすることが何も無いからだ。
すると、またスマホのバイブレーションが鳴った。
「近隣店に応援に行ってもらっていた峯田さんが通りかかるそうなので、乗せてもらってください。やはり事故があっては遅いですから。」
と連絡があってすぐ、肩を叩かれた。振り向くと肩をたたいた人物は峯田さんだった。見下ろす形で彼女に向って、首を傾ける。
ずっと何かを言っているが、残念ながら声は聞こえない。
すると、彼女は国道の端に止まっている車の助手席を開け、席を指さして「のって」と言っている。
これに関しては口を見ていればわかった。
ありがとうございます。と口を動かしてみたが果たして声が出ているかは確認のしようがない。
僕は峯田さんの運転する車に乗った。
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