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「いや~だってアホ面でベンチに座っていたからさ~」
だからって耳に息を吹きかけたってか? まだ耳元がゾワゾワする・・・うぇー。
「そんな顔しないでよ。こんな美少女が耳元に息を吹きかけたんだよ? 普通なら喜ばない?」
「いやお前男じゃん」
「でも見た目はほぼ女の子でしょ」
ほぼっていうよりは“明らかに”女の子ではあるけれど。まったく奇跡の男の娘でも中身がこんなじゃなぁ。
「ギャップ萌えってやつだって」
恰好が美少女なのに一人称が“俺”のところもギャップだって?
「でもそれ狙ってやってないだろ」
「俺くらいになると天然で出来ちゃうの。本当罪作りで困るよねー」
とか言って困っている素振りなんて微塵も感じない。俺も結構適当に生きているけど、コイツも相当だ。
余裕で肩に掛かる長い髪をひと房クルクルと指に巻き付けながらフフン、とどこかイラつく笑みを浮かべるミヨ。その隣にはレディースもののショッパーがいくつも並んでいる。
「それで、なにしてるの、こんな所で」
「なにって買い物に決まっているだろ。ここ何処だと思ってんだよ」
いろんな店を一気に見て回れるショッピングモールだぞ。
「そんなこと見れば分かるし」
こっちの温度よりもグンと低い温度でミヨがバッサリと切る。なんだよ、まったく。
「なんでここに座っているのかと思って」
「休憩」
「うわ」
やめて、そんな憐れんだような顔しないで。
「映画観終わったけどドリンク残っているからベンチに座っていただけだって」
飲み物を持ったまま店の中回れないだろ? 俺だってコレ飲み終わったら服屋見て回るつもりなんだよ。
「え、映画一人で観るの?」
え、そこ?
「うわー、俺絶対無理だよ。寂しい奴って思われそうでヤダ」
なんて今度は本当に無邪気な顔で言ってきやがる。うるせぇ、映画が始まれば真っ暗で一人とかそうじゃないとか関係ないだろうか!
「それに見終わった後に感想とか言い合えないのって嫌じゃん。アレが良かったとかココがグッと来たとか語りたいじゃん」
やめて、そんな美少女の眼差しで。俺だってちょっと寂しくなるときあるよっ。
「俺も結構映画とか観るんだけどな」
「じゃぁ今度映画観終わったら連絡していい? 感想とか言いたいし」
それなら俺は寂しい奴でもなくなるよね?
「あ、それはいいや。俺映画は彼女と一緒に観ることにしているから」
・・・そうっすか。
「あ、彼女から連絡来た。じゃね」
スマホを取り出した奴は突然現れてまた突然とその席を立って行った。なんだよ、本当に。ただ余計に心を乱していきやがって・・・まぁいつものことだけどさ。
「・・・帰るか」
神様、最近の俺の行いはそんなに悪かったですかね?
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