第6-3話 混沌は緩やかに街を飲み込む〜幕間〜

「えぇ、はい……はい……なるほど。分かりました、ありがとうございます」

エルドレッド・ターナーは事務所で1人、電話先の誰かと話を終えると、受話器を起いた。デスクに深く腰掛けながら、彼なりに見えてきたこの事件の真相について思案する。

「……そう来るとは、な」

事務所に人影は無い。放たれた言葉は誰の為でもなく、あえて言うならば彼自身を納得させる為に呟かれたものかもしれない。

「これは流石の俺でも予想外だ。まさか、本当に国家機密レベルの話に足を踏み入れちまうとは思いもしなかったぜ」

デスクの横、壁一面に貼られたコルクボードの上にはマンハッタンの地図とともに、3箇所差し込まれたピンには、これまでのアルバトロスの犯行の被害者写真が差し込まれていた。エルドレッドはデスクから立ち上がると、新たに予告を出された被害者……ライオネル・トランスフィールド邸のある場所に、彼の写真をピンで止めた。

「これで最後……だが、ショーの幕開けはもう少し後だ」

この街で起こる幾つもの事件、その背後で蠢く陰謀を全て手玉に取り、掌の上で転がる様を眺めながら彼は……彼は楽しそうに、愉しそうに笑った。

「期待してるぜ、大怪盗アルバトロス」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る