第46話「拝啓、僕の感情」
今からこんな奴らと戦うのかよ。右のリスなんて、手をポキポキと鳴らしてやがる。
実際勝てるのだろうか。いや、勝つしかない。勝たないと食べれられる。それだけだ。
ボスリス、木村が居るので、どうにかして逃げる手段を考えないと。子リスに勝ったとしてもボスの木村にやられてしまう。
考えろ、僕。何かあるはずだ。何か。僕が考えながら悩んでいる時に、子リス達がもうすでに襲い掛かっていた。
「くっ、なにしやがる。痛い。結構強いじゃないかよ」
「…………」
子リスのいきなりのパンチに、肘でガードをする。少し空気を読みやがれ。いきなりだったので対応できなかった。
アミュはと言うと、襲い掛かってくる子リスをパンチをパンチで返している。子リス達もさすがのアミュのパンチには勝てないらしく、次々と倒れていく。
「さすがアミュさんです。拳を拳で返すなんて凄いです。もう剣士なんて辞めて、格闘家なんかになったらいいんじゃないですか」
さすがに聞こえてないだろう、聞こえていたらマズいだろうなと思いながら言った。大丈夫だ、……だろう?
「ああ、鍛えているからな。ただこんな私でも
子リスを次々とボコボコにしていく。二十匹居た子リスはすでに半分も満たない数になっていた。数匹は足をガクガクしながら、アミュの姿を引くように見つめている。
「何をやっている。お前ら。人間如きに負けるなんて許さんぞ。ほら行け!!」
ボスの木村が地面をドシンと鳴らす。それに驚かされた子リスはすぐさま、アミュと僕に襲い掛かる。
僕も負けてはいられないな。襲い掛かる子リスに僕は、カウンターでパンチを繰り出し、クリティカルヒットした。子リスは「グフぅし」とつぶやきながら、ぶっ倒れた。
「え?僕って強いの、もしかして」
子リスが弱いのだろうか。こんなに簡単に倒れては僕の鼻がのびてしまう。この調子で他の子リスもぶっ倒してやるぜ。
「ぐふぅ」
「ちょっとドラコ?大丈夫なの?なに子リスにやられてるの」
「大丈夫です。少し油断しただけです」
僕は「てへへ」と頭を掻きながらアミュにペコリと頭を下げた。集中しないと、雑魚敵になんかには負けられない。
思いっきり、子リスに向かって力いっぱいに拳を当てる。次第に数も減っていき、気づいた頃には子リスはあと一匹。他の子リス達は地面に横たわっていた。
「く、くそ、やられっぱなしじゃねーかよ。お前ら弱すぎるわ」
木村のため息が周辺に漏れる。子リスは下唇を噛みしめながら「くそったれ」とだけ言いながらアミュに突っ込んでいく。
ただ、アミュはそんな言葉聞こえてなくて、お構いなしに拳を子リスのお腹に当てる。クリティカルヒットだ。「ぐふぅ」と声だけが聞こえて、最後の一匹も横倒れる。
「あとはお前だけだな。もう味方は居ないぞ。こちらも手荒な真似はしたくない。この場から去ってくれないか」
アミュは木村にそう懇願した。ただ、ボスリスの木村は腕組をしながら、「ふん」とだけ鼻で返事をして、天に向かって大笑いを見せる。
「はははははは、こいつは傑作だぜ。子分を全滅させるとはな。ぜっていに許さねーよ。お前らまとめて喰ってやる」
木村の目が僕らを睨みつける。威圧感を感じる。相当強い相手ってことだけはわかる。
すると、木村が瞬時に突進してきた。アミュはぎりぎりながら避ける。木村の拳は大きな大木にヒットする。成人男性、十人以上の太さがあるような大木を拳で、ギギギと真っ二つに割りやがった。
「なんていうパワーだ、まるで斧で切ったかのように木が割れたぞ。こんなの当たったらひとたまりもないじゃないか」
さすがのアミュも「くっ」と言いながら、攻める態勢から逃げの態勢にシフトチェンジする。
僕はもうすでに逃げる準備は出来ていますよ。ただ、逃げても追いかけてくるだけで、イタチごっこでしかならない。どこかでケリはつけないといけない。頭の中、奥底では本能ながら実感していた。
その考えはアミュさんも一緒だったようで、僕に目線を送る。そして、大声を僕に向けて言った。
「ドラコ、ここは私がなんとかするからあなたは逃げなさい。人間よりもドラコンの方が長生きする、この世界の秩序はそういうものよ。あなたに出会えて楽しかった。さあ、行きなさい。早く。早く!」
次第に声も荒くなっていくアミュ。僕はそれに従い、ボスリスに背中を見せながら足早にこの場から抜けようとする。
「逃がすか、このドラゴンが。お前が一番栄養源になるんだよ」
木村の方も瞬時に僕を追う。ただ、アミュは木村のわき腹を思いっきりぶっ叩いた。
「何しやがる。小娘風情が」
ぎろりと木村はアミュを睨みつける。恐怖心からか足をガクガクとさせ、アミュはその場に腰をペタンと下す。
木村は思いっきり腕を振り上げ、標的をアミュに切り替えた。
「終わりだ。小娘。あの世に行きな」
僕は背中を見せながら走る。本当にこれで良かったのだろうか。僕の主人はアミュさん一人。それにあの人が居なけれな僕と言う存在なんて今になかっただろうに。
気持ちと一致してか、お腹、喉にかけて熱くなってくる。なんでこんな時に。今はそれどころじゃない。気づいた時には、ふと木村の方に再び、僕は振り向いていた。
「ここで逃げちゃ男じゃねーよ、こら、木村、相手はこの僕だ!!」
大声で叫んだつもりが、僕は口から感情というなの炎を出していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます