第41話「拝啓、洞窟へ」
何時間歩いたんだろう。僕は額から汗がぽとりと落ちた。相変わらず、アミュさんは汗を多少はかいているものの、その足は止まることなく歩き進んでいる。我ながらとんでもない人だと感じる。この太陽の中、あんまり汗をかかないなんてどうかしている。確かに、息を少しは荒げているが、凄い精神力を持った人だ。尊敬に値するね。アミュさん、僕はこれからも着いていきますよ。
すると、洞窟を示す、穴が見えてきた。
「ここは……もしや!」
僕は手を上にあげて、飛び上がった。ようやく目的地に着いたぞ。ここまで来るまで長かった。ぺたんと僕は腰を下ろした。
目の前には大きな穴。奥底には奇妙な雰囲気を醸し出している。まるで何でも吸い込んでしまうブラックホールのような洞窟だった。出来ることならば入りたくない、そう思うような洞窟。こんなところに何でも効く薬草なんて存在するのだろうか。裏ボス居そうだな、ラスボスよりも強い裏ボス。ゲームだったら確実に居るだろう。ただ安心してもいいだろう、ここは異世界、ゲームの世界ではないのだから、そんなのは居ない。居ないよね?
急に心配になってくる。入ったことのない洞窟だからだろうか。手汗が凄い。疲れ以上に何かを感じてしまっているのかもしれない。
「ドラコ。なに座ってるの?ここからが本番よ。なにせ、薬草を五個取らなくちゃクエスト成功じゃないんだからね。目的と手段が逆になってはダメよ。この洞窟がスタートなのだから」
そうだよな。僕は自分の腰をパンと叩いた。気合を入れた。ここからがスタートなんだ。
弱気になってはいけない。見てもいないボスなんて知っちゃこっちゃねーよ。それにリオさんが敵は居ないって言ってたしな。
よし、ここで頑張らなければクエスト失敗にもなっちまうぜ。ただ、だけど、一回ぐらいは休憩取りたい、ペタンと座って以来、そんな気分になっていたのだけど、アミュさんはヤル気みたいだ。
「早く追い付かないとね。リリィが待っているわ」
地面を力強く足を踏み入れながら、洞窟へとアミュは進んでいく。行くしかないか……、しょうがないね。
「待ってください!アミュさん!僕も行きます」
僕はそう言いながら(吠えて)、アミュの後ろに着く。ここは僕の定位置だとばかりに後ろを歩く。
「んー。意外と真っ暗なのよね。ドラコ、ちょっと灯り出すから、ちょっと待ってね」
お、少しばかりの休憩なのかな?僕はぺたんと座り込む。ああ、地面から冷たい感覚が直接肌に伝わってくる。正直、気持ちいい。
「あ、あった。これでどうかな」
アミュはぱちんと音を立てて、灯りをつけた。そしてランタンみたいな容器に灯りを入れると懐中電灯みたいなランプを作った。
「さ、行くわよ。、これならよく見えて歩けるはずよ」
「ちょっと待ってください。腰に根が張ったみたいです」
少し休憩しないのかなと僕はアミュさんを見つめる。だけど無情にも伝わらないみたいだ。そこには歩き続けるアミュの姿があった。
僕は「よっコラショ」と声を出しながら、立ち上がった。もう少し頑張るか。薬草一個でも見つかったら休憩するだろう。そう心に思いながら周辺を見渡しながら歩いた。
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