第40話「拝啓、出発」
アミュが水を取ってきた時には、神楽坂は移動した直後だった。
僕は神楽坂から手渡された手紙を渡した。内容は、急ぎの依頼だったので先に行きますとだけ書いてあった。
アミュは「あらー」とだけ言い、一息息を吐いた。
「もう行ってたのね。それじゃ私たちは朝ご飯を食べてから行きましょう。もう作ったことだし。さてご飯食べるわよ。ドラコ!」
アミュはパンと掌で音を鳴らして、バックから保存用のパンを出した。僕も、そのパンをかじりながら水を飲む。
神楽坂のいる草むらからには、心なしかお腹の空いた野獣の目を感じたが、うん、気にしないでおこう。
パン一個残し、僕は朝ご飯を終えた。お皿に次いでいる水を口に含んでゴクリと飲んだ。そして僕の顔をパチンと叩き。気合を入れた。
「よし、行くわよ。ドラコ!、早々にリリィに追いつくわよ」
アミュさんもヤル気が満々らしい。僕はアミュにバレないように残していたパンを神楽坂の隠れている草むらに投げ込んだ。
「まあ、これで餓死はしのげるだろう。感謝しろよ。神楽坂。お腹空くのはつらいからな」
アミュと一緒に山に登った。その際に、チラリと神楽坂が居る草むらを見る。ガサガサと動いているのを見ると今まさに、パンを食べているのだろうか。そう見守りながら、足を一歩一歩、山に向かって歩いていった。
歩いているうちに、木が無くなっていき、岩がおおくなってくる。この近くに洞窟があるらしい。洞窟の奥底に薬草があるとギルドの仕事の仕様書に書いてあった。
「どこにあるのかしらね。もうすぐあると思うのだけど」
アミュは山道を一歩一歩、力いっぱいに歩く。僕はその後ろで着いていく形になっている。
本当にこの仕様書は合っているのだろうか、それすら思ってしまう。
僕は「ハアハア」と息を荒げてしまう。山だからだろうか、酸素が少ない気がする。
「アミュさん、大丈夫ですか?息、大丈夫ですか?」
僕はアミュに声をかける。アミュは、首を傾げながら、僕の顔を見る。
「なに?ドラコ?もしかしてお水欲しいの?ちょっと待ってね」
リュックの中に入っている水筒を取り出し、平べったく底のある器(犬用の水飲み皿のようなもの)に水を入れて、僕の目の前に置いた。
「さあ、飲みなさい。飲んだら行くわよ。ドラコ。やっぱりリリィを一人には出来ないわ」
そんなつもりで声をかけたのではないのだけど、まあいいや。水飲めるのだったら飲めるうちに飲んでおこう。いざ、飲めなくなるのは辛いからな。たた、やはりアミュさんはリーダーの器だよな。こんな登山の最中、仲間のことを心配するなんて。
僕は目の前に置かれたお皿に入ってあった水をゴクリと飲みほした。アミュは飲み干したお皿をバックに戻すと、再び足を歩き出した。
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