第39話「拝啓、神楽坂の言葉」

「それじゃ、説明はどうすんだよ。アミュさんが納得しないぞ。それに、お前魔力が全然ないんじゃ危ないんじゃないのか?」

「アミュさんにはもう私は山に向かったって事にしておいて、私も元の姿に戻れるようになったら速攻で向かうから。それに、何も準備してないわけじゃないわよ」

 神楽坂は不敵な笑みを浮かべる。何かあるのかと心の中で思いながら、僕はゴクリと喉を鳴らす。


「これよ。この前の蜂処理の時に買った、モンスター用の魔除け道具よ。起動させれば短時間であれば大丈夫よ。しかもここのモンスターは雑魚しかいないわ。魔除け道具さえあれば切り抜けられるはずよ」

 神楽坂がドヤ顔をしながら、自慢げに言う。そんなものがあったのか。それならば心配いらないだろう。そう思っておこう。あいつならばなんとかなりそうだし。


「分かった。もし何かあればって何にもできないけれど。神楽坂、死ぬなよ……」

 僕は心配そうにぺたんと座り込んでいる神楽坂を見る。神楽坂は地面にある砂を僕にかけてくる。

「ちょ、な、何するんだよ。ぺっぺ、口に砂が入ったじゃないかよ」

「そんな死亡プラグ立てるんじゃないわよ。大丈夫だから、もう、早く薬草取りに行ってらっしゃい」

「分かったよ。それじゃアミュさんが帰ってきたら出発する。いいな」

 神楽坂がコクリと頷く。僕は草むらに神楽坂を手で移動させる。心の中ではこれで良かったのだろうか、と思うところもあったのだけど、今は仕方ない。何もできない自分がやるせなかった。

「ちょっと待って、これだけ渡してちょうだい!」

 神楽坂は胸元から紙とペンを取り出した。なんちゅうところから取り出しているんだよ、と突っ込みたくもなったが、喉からゴクンと押し込んだ。そして、僕に何か書いた紙をた渡してきた。

「あんた、人間と喋ることが出来ないでしょう。確実に伝えるために紙で書いてやったわ。感謝しなさい」

 確かに、言われてみればそうだった。僕の声は人間には届かない。その現実を再度知る前に対策を取ってくれた神楽坂には感謝しよう。

「ああ、確かに受け取ったぜ。お前の意志をよ」

 紙を手に取ると、神楽坂の手をぎゅっと握った。

「痛い、痛い、あんたバカなの?感動に浸るのはいいけれど、加減ぐらいしなさいよ。バカ」

 苦笑いしが出なかった。ここは感動に流されて、空気を読んでほしかった。そう僕は横を向いてため息を吐いた。

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