第29話「拝啓、男なら覚悟を決めろ」
そんなやり取りをしていたら、準備が終わったアミュが戻ってきた。
「へー。もう仲が良くなったんだ。それじゃ、今回のクエストは採取クエストだし、ドラコも一緒に行こうか」
ニコリと僕に向かって微笑んだ。何て天使なんだろ。素晴らしい。優しさの底が見えないお方だ。これを女神と言わずになんて言おう。
僕は顔を縦に振り、思いっきりジャンプした。着地した後に、思いっきり、ガッツポーズをした。
「え?でも、危ないですし、ドラゴンは置いておきましょうよ」
神楽坂およびリリィがそうアミュに伝える。なんたる余計なことを言うのだろうか。こいつは、本当に敵にしか見えなくなる。
アミュは顎に手を置きながら、「うーん」と考え込む。
「確かに、リリィの言う通り、山だし、危ないかもしれないわね。それじゃ、お留守番の方が良いのかな?」
……なんだと、意見が180度、コロッと変わりやがっただと。待て待て、それは軽率すぎるのではないだろうか。異議を申し込む。
神楽坂は顎を上に上げて、ドヤ顔を僕に見せる。明らかに、しょせんはドラゴンと人間なのよって言っているような差別的雰囲気すら感じる。
くそ、どうすればいいんだ。また脱走して着いていくしかないのだろうか。それはまたアミュさんが哀しむからやりたくないんだけどな。仕方がない。最後の手段だ。
「……、これだけはやりたくなかったんだけど、宮本龍太流奥義……」
僕は背中を床につけて、顔、手足をばたつかせた。そして、寂しそうな声を出しながら、動き回る。イメージは幼稚園児が親に欲しいものを買ってもらえず、駄々をこねているのを想像してほしい。そんな雰囲気を出しながら、精いっぱい動き回った。
神楽坂からは「うわぁぁ」との声が聞こえてくる。実際、希望と生死が掛かってるんだ。悠長なことを言ってられない。その答えは、アミュさん及び、神様が握っているんだ、と真剣な目でアミュさんに訴えた。
すると、アミュは口に手を押さえながら、ボソリと「可愛い」とつぶやいた。
「そんなに一緒に行きたいのね。そうねぇ。この前も私に会いに脱走したし、とんでもない寂しがり屋さんね。また脱走したりしても大変だし、連れていきましょう。採取だけだしそんなに危なくはないでしょう」
ニコリと僕を見ながら微笑んだ。神楽坂は「うぇ」と舌を出しながら、口を尖らせていた。
今回は勝ちだぜ。やった。心の中で祝杯を挙げた。
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