第28話「拝啓、女のカン」
再度、アミュに怒られながらも、後悔はなかった。あのままだったらリリィの思惑通りになっていたと思うと、今でも怒りがこみ上げてくる。
ギュッと拳を握ると、準備をしているアミュをよそ見に、隣に居るリリィを睨んだ。リリィは口笛を吹きながら目線を逸らす。
「だって、ドラコこそ、アミュさんといちゃいちゃしてたじゃん。私知っているんだからね。私の悪寒もとい、女のカンがそう言ってんのよ」
女のカンこわっ、見てないのになんでわかるんだよ。カンっていうか、ずっと見ていたんじゃないかすら思えてくる。
「全く、次やったらまた噛みつくからな。また痛い思いをさせてやるぜ」
僕はリリィ及び、神楽坂に牽制を入れる。「はーい」とだけ軽い返事はしていたが、どこか嘘っぽい。
「ていうか、クエストはどこに行くんだよ。山に薬草取りに行くだけだろう。なんでアミュさんを誘ったんだ?」
僕は気になってたので、神楽坂に聞く。神楽坂は真顔で僕を見ながら、堂々と胸を張りながら言う。
「アミュさんとデートがしたいからよ。当然、他のメンバーには声を掛けてないわ。だって薬草取りでしょう。そんなの誰だって出来るわよ。ギルドの人に話を聞いてすぐさま押さえたわ。敵もそんなに強くないし、おちゃのこさいさいよ」
神楽坂は、僕を鼻で笑いながら、余裕ですっという表情をしている。お前の行動力が凄すぎるのは認める。ただ、なぜだろう。理由は薄々気づいていたものの、腹が立ってくる。ただ、一つ、気がかりなことがある。このまま二人だけでクエストに行ってしまうと、ガチで百合展開になりかねない(主に神楽坂のせいでもあるけれど)。それに、また食料と水を少しだけしか置いといてくれない可能性すらある。またもや生死をさまようのはごめんだ。僕は神楽坂およびリリィの足にしがみつく。
「そんなのズルい。僕も連れて行きなさい。絶対そのクエストに着いて行ってやるんだからね」
だけど神楽坂は目を見開きながら、真顔で僕を見つめながら言う。
「は?連れて行くわけないじゃない。さっき、アミュさんと良い展開になっていたのに、全てあんたのせいで何も無かったんだからね。あんたが居なければ、アミュさんは私のモノだったのだからね」
腕組をしながら、プイっと顔を背けた。そうならないためにやったんだろうが。僕は思いっきり神楽坂の足にしがみつく。それを神楽坂は足を大きく振り、僕を振り切ろうとする。
絶対に離してなるものか。このまま離したら、アミュさんは僕のモノじゃ無くなってしまう。次第に涙目になりながら、「ぐぬぬ」と歯を食いしばる。
「早く、どきなさい。邪魔でしょ。このクソドラ。大人しくしなさい」
「いーや。絶対に離れない。連れて行ってもらうまで、絶対にな」
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