第27話「拝啓、高山地区の薬草」
「それじゃ、今回取ってきたクエストはこれです」
リリィは服の中から、小さくまとめた一枚の紙を取り出した。そしてそれをアミュに渡した。僕はそのシーンを見て……、ない。なんせアミュさんに目隠しされたからな。なんだか残念だったような。だけど、手のぬくもりを感じられたから悔いはない。
「なになに。今回のクエストは洞窟内に生えている薬草を取る採取クエストか。ん?結構高額だけど、何か理由はあるの?」
アミュは髪を耳にかき分け、首を傾げながら、リリィに聞いた。リリィも首を傾げながら、頭にハテナマークをつけて顎に手を添える。
「んー。なんででしょうね。ただの山に生えている薬草のはずなんですがね。ここの高山地区ならば、敵もそんなにいないし、安全だと思うんですけどね」
クエスト指示書に書いているのは、薬草×五個の採取。リリィから詳細を聞いたのだけど、薬草はこの地区にしか生えなく、年に何回かは都が運営するギルドで冒険者を集めて採取クエストに出るのだとか。今回は医療機関から至急必要との案内で、高額だと聞いて受けたらしい。
ただ、なぜか普通のクエストよりも高額なのが、アミュさんとして気になるところらしい。
「んー。本当に受けていいのだろうか。何か嫌な予感がする」
アミュは金髪の髪の毛を机に置いていた髪留めを使い、ポニーテールにした。僕とリリィはいつの間にか尊さを感じて、手を合わせて祈っていた。
「こらこら、祈るな。私はそんなたいそうな者でもない」
耳まで真っ赤にしているアミュさんが僕らに言った。そんな事ないですよ、このまま祈り続けたい女神みたいな人です。だけど、このまま祈り続けていてもアミュさんが困るだけなので止めてあげた。迷惑かけるのはいけない。
「至急らしいので、早めにクエストに出てくれとギルドから連絡があったのです。もし行かないとなれば、今後クエスト受けるのが厳しくなるかも」
リリィはポリポリと頬を掻いた。だけど、なぜそんな急ぎのクエストを神楽坂なんかに依頼したんだろうか。
困っているリリィを見たアミュは、そっとリリィに近づき、頭を撫でた。
「きゃぁ、え?えーーーーーー、アミュさん、なんで」
撫でられた瞬間、腰を抜かしたらしい、リリィはその場に座り込んだ。アミュはニコリと微笑みながら、頭を撫で続ける。
「あなたが困ってたら助けるのは当たり前じゃない。私はあなたの味方よ」
ウルウルと涙目になっているリリィ、次第に身体を震わせながら、アミュに飛びついた。アミュは一瞬、目を見開いたが、リリィの頭を優しく撫でている。
それを僕は歯をきりきりしながら、見つめていた。そう言うのマジでいいから。早くアミュさんから離れてほしいのだけど。少し間があって、アミュはニコリとリリィに微笑む。
「それじゃ、そろそろ準備して出かけましょうか。お仕事(クエスト)に」
リリィはアミュの顔を下から見つめると、とろりとした瞳を見せながら、
「……、後少しだけこのままで……」
アミュのおっぱいの方に埋もれていった。だけど、それだけは許せない。僕ですらやったことない行為だ。気が付いたらリリィの太ももをガブリと噛んでいた。
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