第25話「拝啓、お狐の尻尾」

「痛っいーーーーー。なんで噛んでくるのよ、このバカドラ」

 思いっきり噛んでやったぜ。だけど安心しろよ。みね打ちならぬみね噛みだ。血は出ていないぜ。僕は安易に血は出さない主義なんでね。だけどなんだろう、女性の人っていい香りがするはずだろ、狐だからだろうか、けものの匂いがしてしまったぜ。

 リリィは噛まれた太ももを手で触る。少しばかり涙目だった。リリィはぎろりと僕を睨む。アミュは慌てて僕に言う。

「何やってんのよ、ドラコ。仲間に失礼でしょう。あ、ごめんね、リリィちゃん。ドラコにはちゃんと言っておくから」

 チクショウ、怒られたじゃないか。あんなもの見つけるからだろ。神楽坂、お前を許さん。

 僕は威嚇しながら、リリィを見た。リリィも威嚇している。今にも尻尾が見えそうな雰囲気で……。っておい実際見えてるぞ、お前!。

 僕はアミュさんをチラリと見た。手を腰に当てて「もうー」と僕を見つめている。リリィのお尻の尻尾には、まだ気づいていないようだ。くそっ、このままばらしてもいいんだけど、そればかりは可哀そうだからな。助けてやるか。

 僕はアミュの足に抱き着き、リリィに見えるように尻尾を振り振りする。いきなりの僕の行動にアミュは「キャッ」といいながら、目をつぶる。

 アミュさんには悪いが、これならアホの神楽坂でも気づくだろう。さあ、僕の意志よ。伝われ。


「なにやってるのよ!このバカドラ、早く離れなさい。もうバカドラじゃなくて変態ね」

 リリィが真っ赤な顔をした。それに伴って尻尾も徐々に大きくなっている。興奮すると大きくなるのだろうか。やばい、逆効果だったみたいだ。


「もう、甘えん坊さんなんだから。そんなに甘えられたいの?続きは夜にでもね」

 アミュは僕の頭を一撫でした。リリィが再度、激高する。次第に耳まで赤くなってきた。

「あー。イケない気配がしますよ。朝に感じたものと一緒です。これはイケない。っていうかズルい。羨ましい!私も撫でてくださいよ~」

 こいつもしかして、朝そんな雰囲気を感じ取ったから、朝来たのだろうか。僕は開いた口が塞がらない。

 リリィもお尻の尻尾をぶんぶんと振りながら、アミュに近づいていく。

 僕はアミュさんに尻尾をバレさせないためにもアミュとリリィの間に入る。

「ちょっと、邪魔よ。バカドラ。そこをどきなさい」

「それは出来ない。お前のためだ」

 リリィはぎろりと仁王立ちで、僕を睨みつける。僕は背中をリリィに向けて、尻尾を振り続ける。

「……、バカドラ、私をバカにしてるのだったら大概にしなさいよ。これ以上は許さないんだからね」

「ちょっと、……。喧嘩は止めなさい。もう、二人は甘えん坊さんね。私で争わないで」

 アミュは昼ドラのようなセリフを吐いた。素なのだろうか、この世界にはテレビを見れる環境はないし。

 ちなみに争ってはいません。僕はこいつ(神楽坂)のためを思ってやっているのです。だけど、伝わらないらしく、神楽坂はずっと僕に睨みをきかせてくる。これは埒が明かないな。くそどうすれば……。


「ねえ、リリィ……」

 アミュはプルプルと震えだしながら口を開けた。え?もしかして気づいたの?

 僕はゴクリと唾を一滴飲む。つい目線が下に向いてしまった。

 リリィが不穏な空気を感じ取ったのか、腰に手を当てる。「は!」とリリィは後ろを見た。自分の尻尾の気づいたようだ。頬を赤くして涙目で僕を睨む。


「アミュ姉さま!これは、事情がありまして……」

 目がきょろきょろと涙目になりながら、手で説明しようとするが頭ではまとまってないのが分かる。

 これはバレたのか……。万事休す、なのか。

「なにこれ、可愛い!どこで買ったの。雑貨屋さんに置いてあったの?」

 目を輝かしながらアミュはリリィに興奮するように言った。アミュはリリィのお尻に近づき、尻尾をまじまじと見つめていた。

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