第23話「拝啓、戦闘シーン?いいえ?譲れない同士の戦いです」
「ふふふ、お前がドラゴンだな。ボスの指示でお前の肉が必要なんだ。死んでもらうぞ」
一匹のリスが歯を尖らして僕に言った。後の二匹は僕を睨みつけいる。っていうかリスって喋れるのか?初めて知った。いや、この世界だからだろうか。身体の割には声は低く、渋い声だった。
「え?、用があるのはこのドラゴンだけなの?それじゃ私はおいとまするから、後はご自由に~」
神楽坂は、僕から離れて、逃げるポーズをする。しかし、目の前にいるリスが威嚇をする。
「アホかいな。現場見られとるんだし、逃がすアホが居るわけないがな。あんたもここでグッバイや」
リスの鋭い歯がキラリと光る。神楽坂は「そんな」と言いながら、がっくりと唸らせる。
ただ、僕は無性に怒りがこみ上げてきた。後ろに居たリスが何かを言おうとした瞬間、僕の拳は、目の前に居るリスの口めがけて、おもいっきり体重をかけてパンチを入れた。
「~~~~~~~~~~」
パンチを当てた、リスがもがいている。二匹のリスが一匹のリスに駆け寄る。
「くっ、卑怯だぞ。喋っている途中に殴るなんて」
一匹のリスは気を失っているようだ。卑怯?なにそれ、美味しいの?と僕は思ってしまったわけで。
「知らねーよ。こっちはリスに対して恨み持ってんだ。こっちなんぞ。お前らのせいで最初っから殺されかけたんだぞ。お前ら種族には鉄拳制裁だ」
僕は拳をポキポキと鳴らしながら、残り二匹のリスを睨みつける。だけど、リスの方も、鋭い歯で威嚇をしてくる。
「ったく、しょうがないわね。ドラコ。ここは一時休戦よ。今はこんな姿(お狐)だけど、魔法使いの端くれ、魔法でサポートするわ。こんな下級モンスターなんておちゃのこさいさいよ」
神楽坂も拳を構え、リスに威嚇する。って、『お前は物理じゃなくて、魔法だろ。何物理入れようとしているんだ』とツッコミを入れたくもなったが、無視をしてコクリと頷く。
神楽坂は真っ赤になりながら、プイっと唇を噛んだ。
「分かったよ。神楽坂、今回は一時休戦だ。だがよ。アミュさんは僕が貰う。それだけは譲れない」
「な、なんでよ。それは私も譲れない。これは戦争ね。戦争するしかなさそうね」
リスは尖った爪で突っ込んできた。ニヤリと気持ち悪い笑みを浮かべながら、
「なに話してるんだよ、俺を無視するんじゃねー。死ねぇええええええええ」
「「うっさい。今それどころじゃねーんだよ」」
僕と神楽坂のパンチは突っ込んできたリスのお腹に入った。カウンター攻撃の形になっていた。地面にぶっ倒れ、口から泡を出している。
「な、なんだよ。お前ら、聞いていた内容と違うじゃないかよ……うわぁああ」
神楽坂が即座に詠唱して、手から掌サイズの火の粉を出した。リスの方向に向けて撃ったのではなく、僕に対して撃ちやがった……。瞬時に避けて当たらなかったから良かったものの、あいつの方が敵じゃないのか。そう疑問が頭に浮かぶ。
「何するんだよ。危ないじゃん、バカなの?お前って」
「あんたみたいな変態に言われたくないわよ。さっきの言動、特にアミュさんのことを撤回しなさい」
「ぎゃー。熱い……」
キーの高い音が周囲に響く、こいつ感情で動くタイプなのだろうか。なんだか、だんだんと腹が立ってきた。怪我しかけたし、もうキレた。もうキレちゃったわ。
僕は神楽坂に向かって、思いっきり突進した。神楽坂は「キャっ」と言いながらも普通に避ける。
「ぐふぅ……」
だけど何かに出会いかしらぶつかった感覚はあったけれど、なんだったんだろう。
「あ、危ないじゃない。アホなの?ねえアホなの?」
神楽坂が尻尾を振りながら、顔を真っ赤にしながら大声で言った。僕も大きな声で言い返す。
「因果応報(いんがおうほう)だ。お前が先にやったんだろうが」
「はー。なんですって。上等じゃない、私の必殺奥義をここで見せることになるわ。覚悟しなさい……。ってあれ?今まで居たリスがのびてる」
神楽坂の発言で僕も周りを見渡す。すでに三匹のリスは倒れていて口から泡を吹いていた。
「いつの間にやったんだろうな。さっきまでは殺気丸出しで居たはずなのに……」
真っ暗な夜からうっすらと太陽の光が出始めていた。
神楽坂は僕の目の前に来る。「んー」と背伸びをしながら、
「ふん、やはり下級モンスターね、なんだか大したことなかったわね。ああ、気分が冷めちゃったわ」
大きなあくびをして僕に言った。僕もあくびが移ったようだ。大きなあくびをして涙ぐむ。
「僕もそろそろ家に入らないとアミュさんが起きてしまう。今回はここで解散だな」
起きてしまってはなかなか入りにくい。昨日も心配させてしまったのもあるけれど、今日もってなると、さすがに哀しい顔をしそうだ。そんな顔は僕は見たくない。絶対に。
「だけど、ドラコ、覚えておきなさい。この家の天井は私のモノなんだからね。アミュさんの件は絶対に譲らない。最終的はアミュさんは私のモノになるんだからね」
神楽坂は三つの尻尾が風のようになびく。口周りをペロリと舌でひとなめする。
「それは譲んねーよ。いい加減に……」
周辺に風が吹き出した。それは太陽が顔を出し、夜明けを示す風だった。僕は一瞬、目を閉じてしまった。目を開けた頃には神楽坂はこの場から消えていた。
「ちくしょう。言い返す前にどっか行きやがった。今度会ったら絶対に言い返してやるからな」
ボソリと太陽を見つめながら言った。再び、「ふぁ~」とあくびをすると、重たいまぶたを我慢しながら、部屋に入った
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