第22話「拝啓、殺気を発する者」
なんだか彼女を見ていると同じ境遇に思えてきた。彼女を僕自身に置き換えてみると、可哀そうな気分になってきた。この地で野宿とか、命がいくつあっても足りない気がする。実際、最初の方死にかけたのもあるのだけど。ただ、僕の癒しの空間を汚されたくないのも事実。
僕は腕組をしながら、考え込む。そして、一つの考えにまとまった。そして、口を開けた。
「神楽坂。僕のこの癒しの空間に君を入らすのはダメだ。そして、アミュさんは僕が貰う。それは譲らない。僕はやる時はやる男だ」
はっきりと、拳を握りながら、神楽坂の目を真剣な眼差しで見ながら言ってやった。
「なによ。癒しの空間って、そんなの認めないわよ。それにやる時はやるの使い方間違っているわよ。……、まさか、人間と動物の一線を超える気ね。許さない。そんなの私が認めないわ」
「な、なにをする。やめろ……」
神楽坂は、僕に向かってポコポコと拳を当ててくる。いきなり襲ってくるのもだから、僕は腰をペタンと落ちる形になって、><(ばつてん)のようにギュッと目をつぶってしまった。
ただ、魔法使いだからだろうか、威力は全く痛くないところか、気持ちがいい感覚だった。
すると、横の木から、何らかの目線が感じてくる。僕を馬乗りにして叩いていた神楽坂は殴るのを止めた。そして、僕の耳元に口を近づけた。
ちょっと、種族は違えど幼体がそんな事して、とんでもなくえっちいんですけど。不覚にも僕は顔を真っ赤にしてしまい、神楽坂からぷいと顔を遠ざける。
神楽坂は僕の両手首を握り、再度、耳元に口を近づけてくる。これは、やばい、やられる。初めてはアミュさんが良かったのに。
「……、なに照れてんのよ。本当の真正のアホね。それより、この耳から聞いてちょうだい。今、誰かに囲まれているわ。しかもかなりの殺気で私たちを見ている」
僕は、神楽坂の吐息にブルっと感じながらも、
「は?なんでそんなことになってんだよ。お前、まさか仲間を連れてきて、僕に強制的に協力をさせようと……」
「そんなわけないじゃない。本当にアホね。私を信じなさい」
「それじゃ僕は何をすればいい?」
ゴクリと喉を鳴らし、神楽坂を見つめながら言った。神楽坂は真剣な顔をしながら、僕の耳元で言う。
「あなたはおとりになって、頂戴。私はその間に逃げるから」
「…………、出来るか!!」
つい、大声で言ってしまった。それがまずかったのか、潜入する時間だったのかは知らないけれど、目の前には三匹ほどのリスが出てきて、囲まれていた。
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