第20話「拝啓、神楽坂里奈の正体」

「あなた、アミュさんのおっぱい触ってたでしょう。屋根裏で見てたんだからね。この大魔法使いのリリィもとい、神楽坂里奈(かぐらざかりな)の目の黒いうちは好き勝手させないんだからね」

 目の前に居る神楽坂と名乗るお狐少女は、顔を真っ赤にしながら、とってもお怒りだった。


 僕は何かやってしまったのだろうか。なぜ怒っている、この子とは初対面のはず。だけど、この服装、リリィという名前……、いや、そんなはずはない。はずだけど。


 苦し紛れに、僕は頬を赤くなりながら、神楽坂を見て言う。

「おっぱいは触ってた。柔らかかったよ。あの感覚は今も忘れられない」


「変態!、ドラゴンの皮をがぶったオオカミめ。転生前の前世はさぞかし、ヘタレ、むっつり男子だったんだね」

 神楽坂は><(ばつてん)と目をつぶりながら、拳をぎゅっと握りながら、顔を真っ赤にしている。

 誰がヘタレ、むっつりだ。知らない女の子に罵倒される趣味などない。

 だけど、今、転生者って言わなかったか?


「おい、そこのお前、転生者って何か知っているのか?」

 僕はゴクリと喉を鳴らす、神楽坂は腕組をしながら、口を開いた。


「お前じゃないわ。神楽坂様よ。ちゃんと名前で呼びなさい。だけど、あなたを最初見た時、ピンと来たんだよね。あなた転生者でしょ」

その言葉に目を見開いだ。ピンときただと、そんな簡単に分かるものなのだろうか。


「……ああ、最近この世界に来たばっかりだよ。転生者のことを知っていて驚いた。こんなに早く、知っている人と出会えるとは驚きだよ」

 緊張感感じる空気感から、顔がキリっとなってしまう。いつの間にか手汗がびっちょりだった。内情を知るものが近くに居るなんて、それに会話が可能な者。僕は幸運なのかもしれない。


「ふん、だって私も転生者だもん。まあ、こんな雑魚しかいないところに伝説級のドラゴンが居るわけないじゃない。それに行動パターンが人間っぽいし、それにドラゴンっぽくなかったってのが一番の理由ね」


 なるほど、っていうか、ドラゴンっぽい行動って何だろうか。空を飛ぶ?火を吐く?モンハンの敵キャラに出てくるような行動だろうか。本能的に動くのとか楽しそうだけど疲れそうだな。ましてドラゴン自体、見たこともないからな。空想上でしか頭の中で思い浮かぶしか出来ない。

 実際どんな感じなんだろう。機会があれば、本物のドラゴンを見てみたい気もしてきた。


「って、神楽坂、そういう事ならば、少しばかし聞いてもいいか」


「ん?なによ」


「お前って一体誰なんだよ。そんな狐みたいな子、この世界では出会ったことないぞ」


 神楽坂はニヤリと笑みを浮かべ、顎を上げた。だけど背丈は同じだから、顎を上げても目線は一緒だった。

「そうね。私の願いを叶えると誓うのならば、教えてあげるわ」


「えー。めんどくさそう。第一、僕はお前に会ったことなんてないし、それじゃ話は終わりだ」


「……、あんたって、サバサバしてるわね。だけど、あなたは私の願いを叶えるしかないの。今回だけは特別、私の仮の姿を見せてあげるわ」

 突如、神楽坂の身体が光だし、三本あった尻尾の一つが赤く染まる。そして、見る見るうちに身体が成長し、見た覚えのある人物になっていった。


「お、お前は、アミュさんの仲間のリリィっていう奴。昼間、アミュさんにべたべたとくっつきやがって、僕のアミュさんを奪いに来たのか」


 神楽坂は、口をぽかんと開けて、首を傾けた。

「何を言っているの?アミュさんは私のモノよ。勝手に取らないで頂戴」


 平然と真顔で言いやがった。なんだよ、あいつは勝手すぎるだろう。転生者って勝手な奴が多いのか。いやこの考えだと、僕まで勝手すぎることになるな。それはない。あいつの性格だろう。許しがたい行動だ。実にけしからん。

 僕はふと気が付くと、真顔になっていた。神楽坂は「あ、」っと言うと人間の姿から、最初見た姿のお狐に戻った。

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