後日談


 魔法を仕掛け、魔生物を放ってからは。

 ラビュラさんと私とで、姿を隠しながら、異世界の森が守られていく様を見守っていきました。

 ですが――放った魔生物は少ないですから、彼らだけで、森をなくそうとする方全員を追い払うのは困難でした。そのような場合は、ラビュラさんが魔法を使って怯ませるのでした。


 ですが、この結果。森には誰も近付かなくなってしまいました。



「……すっかり来なくなりましたね」

「本当、暇ねー……あら? ねえ、あの人――」

「――この土地の持ち主さんですね」


 そう。たまにこの森の様子を見に地主さんがやって来るくらいで、あとは誰も来ません。


「あの人も驚くくらいの仕掛けを用意しないといけないわね」

「まだ仕掛けるんですか?」

「そう。それも、やりすぎなくらい! 大きい仕掛けをねっ? ンフフフ――!」

「悪人みたいな顔してますよラビュラさん」

「さっ、思い立ったらすぐ行動よ!」

「ああそんなに音を立てたら、下の方にばれちゃいますよ……!」





 これに加えて私は、止めてしまっていた鍛錬を再開しました。カゲルが一度封印されて以来、全く触れていなかった双剣を握って。


 湾曲した両刃の、私の手の平二枚分程の長さをした、二本の剣。


 振り回しながら感じるんです。私がもう一度手にとる事を、ずっと待っていたんだと。

 眠っていた身体が目覚めていくのも、日を重ねることに感じられました。


 そうして私は高みを目指しました。

 全ては、異世界の森に放った魔生物に立ち向かう勇敢な方々――アースの戦士達に出会うその日の為。戦いに縁遠いその人達を、全員護り抜く為にと。そう心に刻みながら。



「おーいアスカー!」


 あ。

 リツキさんが呼んでます。


「どうされたんですか?」

「またカゲルの手下が暴れているらしい!」

「そんな、またですか?」

「俺達の出番だ。すぐに向かうぞ!」

「……分かりました。シャイニングシャークス、出動ですね」


 あともう一つ。私はシャイニングシャークスの一員にもなって、カゲルの手下に立ち向かう日々を送るようにもなりました。――そう。カゲルの企みは、戦士達を待つ間も無情に行われているのです。


 このような状況にも関わらず、まだ戦士達が現れることはありません。


 まあ、無理もないです。ここと向こうでは時の流れが違うのですから。でもこれを待つばかりでは、カゲルやその手下は野放しのまま。歯がゆい日々が続いています。




 そうして。あの森に仕掛けをした日から、この世界で一年が過ぎるのです。



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