記録その9 / 少女、対面する その1
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時空魔法によってあっという間に到着したファトバルシティは、カゲル封印当時は壊滅状態だと報じられていたはずが、その様子はなく。このシティ特色の、白壁で統一された建物達が、何事も無く眼下に広がっていました。
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「復興、したんですね」
「そうよー? 私達も手伝ったんだから、このシティの皆と協力して」
住民の様子を見るに、このシティには穏やかな時間が流れているように感じます。元の生活を取り戻したようで、本当に良かった。
「それで、復興ついでにあれも建てたのよ」
と、後ろを振り返ったお姉さん。
私も振り返ると、まるで場違いな、鉄骨とガラスでできた丸みある屋根の建物がありました。
今私が立っている土地のすれすれまで横に広がったその建物は、上に、まるで突き刺さったかのように灯台らしきものが建っていました――もちろんあれも、鉄骨式のガラス張りです。
「おーい早く来いよー!」
手を大きく振って、あの人が私達を呼びます。お兄さんと一緒に、既に鉄骨ガラスの建物の下で待っていました。
「私達も行きましょうか」
「はい」
こんな建物が拠点というあの人は、一体どのような仕事をしているのでしょうか?
扉の前に来ると、それが音もなく開く。それと同時に、建物の中から涼しい風が吹いてきました。
ふう――中に入っても、一面ガラス張りの為か外にいるような気がして、何だか落ち着きません。天井も高いですし。
と考えながら歩いていると、3人が私の少し先で歩くことを止めていました。その人達は、柱と言うには大きすぎる柱の、大きく空いた口の中で待っていました。
しかもその口の中から小気味良い金属音が。それが鳴った途端に、3人は更に奥へと進んでいきます。
こちらを向いた3人が何食わぬ顔で待っていますので、ひとまず私も3人に続きます。
合流した私が落ち着く間もなく、先ほどと同じ音を合図に入口が閉まる。それから、頭から何かに引っ張られる感覚に身を委ねていると、目の前から眩しい光が射してきました。
「――――外が見えます!」
しかも、段々と足下からシティが離れていきますよ!
「いやあ今日もいい天気だなあ!」
「相変わらず壮観っすねー!」
「本当! 全部が眩しく見えるわ!」
何だかわくわくしてきますね。これは昨日の――異世界の扉を開く直前よりも、はるかに心地いい高揚感です。
そんな気持ちから目を覚まさせるような音がチーン、と響く。
シティの景色も見えなくなっていました。
再び開いた入口の先は。床の壁際に点在する照明以外は何もない、鉄製の一本道が続いていました。しかも、それの少し遠くは行き止まりです。
「おいおい。そこで突っ立ってちゃあ、俺達が降りられないぞ」
「 ! すみません」
私が小部屋から降りると、3人はためらいもなく私を追い越し、進んでいきました。
そして、先頭に立つあの人が、行き止まりに向かって3回軽く叩く……ってもしかしてあれは行き止まりではなく――。
「何者だ」
部屋へと続く扉だったんですね。
「シャイニングシャークスのリツキです。急ぎ、報告があって来ました!」
シャイニングシャークス……とは?
そんな事を言おうとするよりも早く扉が開きました。
「あら、シャークスの皆! どうぞ?」
「失礼します!」
「失礼するわ」
「失礼しますっす!」
それぞれの挨拶で、3人が部屋へと入っていく。
「失礼します」
私もそれに続きます。
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