記録 その1 / お告げで目覚めた朝

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 木漏れ日が優しい朝。聞いたことのない人の声が私を目覚めさせました。


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『――よ。戦士よ。目覚めるのです』


「……もう朝ですか……おはようございま、す……?」


さっきの声、女性の声でしたね。

ですが私の知り合いにこのような声の方はいませんし、あの人はこの3日間仕事だからと留守にしてますから、ここにいるのは私ひとりのはず。

何故声がしたのでしょう。

辺りを見回しても誰もいないのに。


『お目覚めですか?』


また声がした。

どこにいる?

姿がみえない。

何故?


『警戒なさらないで。五大戦士の素質を持つあなたに、お伝えしたいことがあるのです』


「五大戦士――?」


確か、強大な影の力で世界の支配を企んでいたカゲルを封印した5人――それが五大戦士だったはずですが。


「どういうことです? 戦士はもう5人存在していて、しかもその戦士達はカゲルを封印したはずでは」


『ええ。ですが、封印は解かれました』


「な――!」

なんですって!?


『今、「ローブン」と「アース」が、影によって滅ぼされようとしています。

 戦士の候補は、あなたを含めて五人存在しています。そして、あなた以外の戦士は「アース」から現れます。

 あなたは「ローブン」と「アース」、この二つの世界の架け橋となり、アースの戦士達と共に「七つの道具」を集め、「影を討ち滅ぼす」という戦士の使命を全うするのです』


「ちょっと待って下さい! 何故カゲルが復活したんです! それに「アース」なんて地域は聞いたことがありません」


『カゲルの復活はいずれ起こる事です。それが今回は早かった、ということに過ぎません』


過ぎません、って、冗談じゃない!

私はあいつに全てを壊された! 全てを奪われた!! そんなやつがあっさり復活して良いわけがない!


「あり得ません! そんなこと――」


『あり得ます。この世界の宿命ですから』


宿命って…………なんて抽象的で――


「下らない。そんなもの、私が断ち切ってみせます」


『そうですか……良いでしょう、早速繋ぎましょうか』


繋ぐ?

っ!? 眩しい……っ!


『今、アースへ扉を繋げました』


…………玄関から光が漏れ出ています!!


『この扉を開けた先で、あなたをアースが待っています』


この先で――といいますか、アースってさっきからずっと出てますね。




……そうでした。さっきこの質問もしましたよ。なのに答えてもらったのは五大戦士のことだけ――このまま進んでしまうところでした。


「さっきから出てくるアースとは一体何です? この世界では聞いたことのない地域ですが」


『アースとは、このローブンに存在していない地域のことです。いうならば、この世界の、遥か空彼方で瞬く星の一種です』


星ってあの、夜空に浮かぶ、どんなに近付いても届かないあれですよね。そんな場所、どう考えてもたどり着けるわけないじゃないですか。


「まるでアースはここと全くの別世界だ、とでも言いたげですね――」


『その通りです。アースは、ローブンとは全く異なる世界なのです』


――なんだか、雲を掴むような話ですね。

ましてや知らない単語や、あり得ない事象を平然と言う、姿を現さない者の話ですから、なおのこと。


ですが。

万が一、ここまでの話が事実だとしたら?


そう考えると――私がしたような悲しい経験を、もう誰にもさせない為にも、簡単には無視ができません。


「そのアースという世界とこの世界に、一体どんな関係が?」


『それを教える時は、あなたが真に戦士となった時です……さあ、左手を前に出してください』


真に戦士となった時、ですか…………まあ、とりあえず今は従いましょう。これほど確かめようのない事象を羅列されてしまっては、知らないままではいられませんし。


それに今まで待ち望んでいたじゃありませんか。


自分の手で、カゲルの息の根を止めてやること。


この機会は、やっぱり逃しちゃいけない。




左手を出した後、きーん、と、鼓膜を刺してくる高音。

そして、一筋の光が私の左手首をつたい回る。



現れたのは、銀色のチェーンブレスレットでした。


『そのブレスレットにプレートがありますね? その中心のくぼみに、光輝く宝石がはめ込まれた瞬間。それが、あなたが真の戦士に選ばれた時です』


なるほど。そうなれば2つの世界の関係を教えてくれると。


『……覚悟は、良いですね?』


「ええ。もちろんです」


『では、その左手で扉のノブを握るのです』



未だに光が漏れ出ている、玄関の扉。

そのノブを、ブレスレットが付いた左の手で握る。



『さあ、戦士よ!「アース」への扉を開くのです……!』


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