5億円盗難未解決事件

『今日は、あの5億円盗難事件から10年目がたった日なんですよ!』

 バラエティ番組と化したと言われても過言ではないニュース番組が特集を始めた。


 『五億円未解決事件』それは、某有名企業の子供が誘拐され、身代金として5億円を請求したという10年前に世間を騒がせた事件である。

 犯人は五億円の身代金を受け取ると、近くのコンビニの中に立て篭もったのだ。


犯人はたった1人ではあったが常に人質の子供を離さず、大企業の子供ということもあってか強引な手立てを打つことができず、立てこもりを許さざる終えなかった。


 立てこもりを始めて2日後、事態が動くことになる。


 人質の子供がコンビニから1人で出てきたのだ。

「突入!」という警察の声、報道陣のフラッシュや喧騒

 

そして、コンビニの中には身代金である五億円どころか、犯人の姿はなかったのであった。


 その後の調査では、2日間を過ごすために消費された飲食物のゴミ以外に変わった形勢は無かった。

 幸い犯人は監視カメラを壊すことも隠すこともしておらず、これを見れば犯人の足取りを見つけるのも難しくないだろうと誰もが期待していた。


 最後に犯人が映っていたシーンはトイレに人質を連れて行くところである。

 そして、5時間経ったあたりだろうか、

トイレから出てきたのは子供1人だけだったのだ。

 その後、子供は外に出て、警察がコンビニに突入といった時系列である。

 

 警察犬を導入してもなお、犯人を見つけることができず、子供に事情聴取しても、「寝て起きたら居なくなっていた」という証言のみ


 360度包囲していたコンビニの中から綺麗さっぱり犯人は消えていたのであった。

 その後も犯人はおろか、犯人の素性、形跡すらも見つけることができず、捜査は迷宮入りしたのであった。


 この事件後、世間やニュース番組ではいろんな考察が飛び交った。

「警察と犯人は繋がっていたのではないのか?」、「実はまだコンビニの中にいるじゃ無いか?」、「犯人は異世界転生したんじゃね?」、「瞬間移動できる犯人なんだよ」

といった、ありえそうなものから非現実的なものまで噂され、警察や警備会社は、捜査方法の見直し、強化を行なったといわれている。

 あまりに奇怪な事件ゆえに、日本のみならず海外でも話題になり、語り継がれ、番組では特集や再現VTRや、再現ドラマが度々放送されていた。

 

 あれから10年の時が経った、犯人の映っていた監視カメラや報道陣の写真から、この人物では無いのか?といった人物が上がったのである。


 捜査は一歩進んだと思われた。

 調査をした結果、その人物は事件よりも5年も前に行方不明になっている人間であることが分かり、捜索陣に気味が悪い情報を残して捜査は凍結したのであった。


「どうせ、警察とグルだったんでしょ。」

 10年目だ。今宵も再現ドラマで視聴率を稼ぐ番組があるだろうなとエビナが思いふけているところで、ジリリリリっと目覚まし時計の音がする。

 エビナは目覚ましを止め、テレビを消し、学校に向かうのであった。

 

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