第36話
いつもあたしをからかって、その反応を見て楽しんでいる。
本当に嫌な奴。
エレベーターの中、壁にもたれかかる様にして立っている
真柴を見上げる。
あたしの視線に気付いたのか、ちらっとこっちを見たので
あわてて目を逸らした。
「いつから学校だ?」
フロアー表示に視線を移した真柴が口を開いた。
「さあ、まだ何の連絡も無いから、分からない」
「明日は告別式だろ。行くのか?」
「一応ね…って何であんたがそんな事知ってるのよ!」
真柴は、ニヤリとすると人差し指を唇に当て
「企業秘密だ」
と言った。
「ねぇ、あんたがこの事件に首を突っ込んでるのは何で?」
あたしは思い切って聞いてみた。
真柴は口元に笑みを残したまま答える。
「そりゃ、つれないお嬢様に構ってもらうために決まってるだろう」
あたしが即座に否定した理由を、さらっと口にした。
「…誰からの依頼なの?」
あたしは慎重に尋ねる。
一瞬、真柴の笑みが消えた。
―――――やっぱり、そうか。
必死に考え、至った答え。
直ぐに、いつものからかうような目をした。
「面白ぇこと言うなぁ。おれは探偵じゃないんだぜ」
「あんたに情報提供した人物。それが依頼人ね。
理由は―――――」
あたしをじっと見つめる真柴。
…理由…
あっ!
「あたしね。あたしが聖ニコルの生徒だから」
真柴が両手を上にあげた。
「参ったな…大したもんだ。名探偵さん」
大きなため息を吐き
「依頼してきた奴は、犯人が他にいると睨んでる。
ま、おれも調書を読んでおかしいとは思ったし」
「一体誰なのよ」
「それだけは、お嬢にも教えられねぇな」
そう言うと、口を引き結ぶ。
硬い意志の表れに、あたしはそれ以上追及する事を諦めた。
「…分かったわ。誰かは聞かない。
でも、新しい情報が入ったら、必ずあたしにも教えて。
あたしも何か分かったら、あんたに知らせるから」
「―――――了解」
確か、いずみさんの一件の時にもこんな会話をした気がする。
だけど、あの時はあたしに内緒で、裏で色々調べ回ってた。
「ねぇ、約束よ!」
念押しすると、肩を竦めながらも頷いた。
あたしは右手を差し出す。
「何だ?」
「握手。共同戦線成立の証よ」
ふっと笑みを浮かべると、あたしの手を取りぐっと引き上げた。
「ちょっ…何す…」
手を退く間もなく、容の良い唇が優しく甲に触れる。
艶やかな微笑みに、息が止まりそうになった―――――…
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