第7話
結局、真柴の言ったとおり学校は警官に完全に包囲(?)されていて
潜り込む隙がなかった。
仕方なく駅に戻ろうとしたものの、スクールバスは当然運休。
路線バスもこの時間帯だと30分に1本しかなく
それも運悪く5分ほど前に出たところ。
そんな訳で、駅までの道のりを歩き始めたのだった。
せっかく学校までやって来たのに、徒労に終わり
(理事長と安堂先生が犯人でないことは分かったけど…)二人ともなんとなく
押し黙ってしまった。
「ねえ、美月。あんた何で組長に冷たいの?」
突然花菜子が口を開いた。
「超イケメンだし、真柴建設の次期社長でしょ?」
…そんなの、どうでもいいもん。
「あっ、もしかして、やくざさんだから?」
…そう、奴は真柴組8代目組長を襲名したらしい。
「だって、あんたの許婚でしょ!」
そうよ、それよ!!
「今時、親同士が勝手に決めた結婚相手なんてありえなくない?!」
あたしが勢い込んで言うと、花菜子は小首を傾げた。
「一般家庭じゃありえないけど、お嬢様の世界ならありなんじゃないの?」
無い!無い!絶対にありえない!!
あたしが真柴 涼と初めて会ったのは、3ヶ月前。
おやじ様に連れられて行ったホテルのロビーで
いきなり婚約者として紹介されたのだ。
あぁそうですか。宜しくお願いします。
なんて言える訳ないでしょ。
他のお嬢様はどうか知らないけど、あたしにはそんな事言えない。
「自由恋愛してる人には分かんないよ」
小中は地元の公立学校に通っていた花菜子には、中2の時から
付き合っている彼氏がいる。
花菜子は、ちょっと驚いたような顔をしてあたしを見つめた。
「美月も組長と恋愛すればいいじゃない」
「へっ?」
意外な言葉に、思わず間の抜けた声が出てしまう。
「な、何言ってんの。
今更、恋愛なんて…そんな事…どうすればいいのよ?」
焦るあたしに、花菜子が言った。
「頭で考えたって仕方ないでしょ。恋ってのはね、ここでするのよ」
自分の胸をポンポンと叩いて、妙に大人びた微笑を浮かべた。
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