後書き

― 西暦2018年8月20日


― サンレオナール王宮でなく、作者自身の職場で多分残業中



 私にとって第四作目にして王国シリーズ最終話となる「開かぬ蕾に積もる雪」が完結致しました。公開前に各話見直し誤字脱字、表現の誤り等無いように気を付けていますが、公開した後であちこち見つけることもありました。その都度改稿しておりましたが、お恥ずかしい限りです。それにもかかわらず最後まで読んでいただき、ありがとうございました。特に応援、フォロー、レビュー、コメント下さった方々、感謝の気持ちでいっぱいです。ご意見ご感想、真摯に受け止めております。皆さまの評価、反応がとても励みになります。



 この話には実在のモデルが居まして、シリーズ第一作「この世界の何処かに」を連載中に何となく構想が出来上がりつつありました。第三作「奥様は変幻自在」の構成を練り始めたのはその後なのですね。「蕾」の方が時系列的に後まで続くので「奥様」を先に連載しないといけない、ということで先に考えていた「蕾」ですがこちらの方が最終作になったわけです。


 ですから「蕾」の主人公アントワーヌ君は第一作「世界」に特別出演しているのに、その時にはまだ作者の頭の中に生まれていなかった「奥様」の主人公アナは第二作「貴方の隣に立つために」に初めて特別出演という運びになったわけです。




 シリーズも四作目となると、他の作品との辻褄を合わせるのが結構大変でした。特に登場人物たちの年齢差と、各話で起こるイベントの前後関係ですね。それからどの人物がその時点で何を知っていて何を知らないか、ということも結構注意が要りました。


 作者として絶対に外せない条件がいくつかありました。まず主人公二人の出会いはフロレンス婚約中、学院在学中の時が良かったのです。他に二人には接点もありませんしね。それにアントワーヌはフロレンスより年下、ショタ属性が出るくらいの歳の差が欲しかったのでした。けれど離れすぎていると学院在学中に出会えないし、ある程度の期間一緒に過ごさせて仲良くならないと将来結婚を誓い合う程の間柄に発展しません。そこで貴族学院を六年制に決定しました。アントワーヌは新入生、フロレンスは最終学年で歳の差は五才となりました。そうして学院でフロレンス卒業までの一年の間、二人は秘密基地で愛を育む時間が持てたのです。


 もう一つは、文官を目指すアントワーヌは優秀な学生として在学中から既にクロードに目を付けさせたったのです。そして文科のアントワーヌと魔術科の教授クロードが出会える場所は学院の図書館が自然だという考えに行きつきました。アントワーヌには絶対に「教授、何かとてもいいことがあったのですか? もしかして運命の『片割れ』を見つけられたとか?」と言わせないと気が済みませんでした。アントワーヌは『片割れ』のビアンカに出会う前の怖いクロードを知っていないといけない、そしてクロードがビアンカに出会ってデレデレの骨抜きになるのはアントワーヌの卒業前でないといけない、ということからアントワーヌと他の登場人物たちの年齢差が決まったというわけです。


 長々とどうでも良いような作者のこだわりが続きましたが、折角のシリーズものなのですからあちこちに矛盾があっては私自身納得できません。この第四作目は他の作品全てとの関わりが強すぎて、結構骨が折れました。作者はこれを書くのに消耗しきったというのが正直なところですが、それだけ完結した喜びも大きいです。




 第一作「世界」と第三作「奥様」の各話の題名はほとんど漢字二、三文字で一つの単語とどれも短く統一しました。第二作「隣」では短い一文、一部は諺や慣用句にしてみました。この話「蕾」はフロレンスという名前が花という意味を持つので各話を花の名前にしようかとも考えていました。実際アントワーヌとの間に生まれた二人の娘は花の名前がつけられましたしね。


 結局、最終話以外の全話を諺や慣用句にまとめました。最終話は江戸いろはガルタの「京の夢大阪の夢」をもじっただけです。各話の内容に合う言葉を探すのも実は大変で、執筆時間のうちかなり時間を取られたと言っても過言ではありません。




 この後、恒例のおまけとして『主要でない登場人物紹介』を載せた後は番外編を少しペースを落として隔日くらいで公開したいと思っています。「奥様」の方の番外編ももう少々ネタがあるので載せていきます。


 王国シリーズ本編はこれで完結ですが、他にスピンオフなどを書いていきたいと思っています。ネタだけは頭の中にあるのですが、書きためた原稿がもう底をついてしまいました。連載開始がいつになるかは未定ですが、引き続きそちらもお読みいただけたら幸いです。



           合間 妹子

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