第11.5話 武術 摩天楼 蹴

 もう少し、もう少しだ。



「おい、そこで何をしている!」



 み、見つかった!?



「お前何言ってんだよ、誰もいねえぞ?」


「音がした気がしたんだよ」


「こんな壁無理だよ、武術も習わない年寄りと病人だ。あの旅人が言ってただろ?もう門番もいらないんじゃないかって、ほっといても中で勝手にくたばるだろうって」


「かわいそー」


 ドンッ


 蹴られた。向こうから。音だけが聞こえる。ビクビクしてる暇なんてないのにな。今日は仕事を休んだ。バレたら怒られる。だけど俺はここを出る。ここにいたい気持ちがないわけじゃない。俺はここが嫌いじゃない。だけどここから出なくちゃいけない。そんな気がする。


 ここは他の国との国境側だ。ここを出ても森がずっと続くらしい。高い高い壁がある。


 あいつの声がする。



「ビルって言うのはね摩天楼だよ。空に伸びてる」


「まてんろう?」


「空をこする削るような高い建物」


「あんなに高く」


「たとえだけどね、見上げると首が痛くなるくらいには高いよ」


「空に届く?」


「ふふふ、そんな気がして、人は空高く建物を伸ばすんだろうね」



 〇〇〇〇〇〇



「おい」


「え?」



 ひょいっと担がれる。



「お前、こんなところでどうした?」



 おじじが不気味に笑っていた。

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