第9話 鰐 砂漠 騎士(比喩三種盛り)

 この家の蝋人形は変なものが多い。いつかどこかで戦ったんだろう傷だらけの馬に乗った男。騎士ナイトと言うらしい。魚のヒレ付きの人やワニのような肌の人。女の子におじいちゃん。向こうの人のいらないものなんだそうだ。これを見せ物にしてお金を取る。有名人や映画のキャラクターらしい。


 映画というのも教わった。あいつは仕事帰りに映画をまとめたきゅうさくでいぶいでいをいっぱい見たらしい。テレビもないから一緒には見られない、とあいつが身振り手振りでいろんな話をしてくれた。



「それはなんていうお話なんだ?」


「『砂漠の財宝』だ。それより鰐男の方だろ?タイトルは『ワニたち』だよ」


「そのまんまだな」


「まず鰐は人間を憎んでた」


「だから食うのか?」


「そう、ただでさえ凶暴な人食い鰐を戦争のため注射や手術で改造した。それに皮はいい柄だし丈夫だからカバンやら財布にした」


「うわぁ」


『よく聞け。オレはお前らの道具にはならない』



 研究所から逃げ出しやっと落ち着いていたワニの元へ人間たちがやってきた。彼は怒り狂いその大きな巨体を揺らし、



「さてこのあとは?」


「みんな食われて死ぬ」


「ブブー、1人だけ鰐に取り込まれる。そこにある鰐男のできあがりだ」

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