第7.5話 ワイン 孤島 探偵(単語使わず)

 海の真ん中に浮かぶ島のように、外を知ることができない。だから余計にここの人たちは過保護なんだよ。彼は早口でそう言った。



「ソラ、一緒にお酒でも飲もうか。ちょっと話そう」



 怒っている。それだけ言ってあとはぱったりと何も言ってはくれない。俺が後をつけたり隠れて探ったり、あの壁を見たことを怒っている。多分そうなんだろう。



「仕事、はいいのか?」


「ん、大丈夫」


「お、俺の親父と同じ、」


「ソラ、ただいま」



 あの塔の家の前。俺も一緒に帰って来たのに。



「お、おかえり」



 カチャカチャと食器の音がして、血の色の飲み物。



「ダメだろ、それ」


「大丈夫だよ、僕はここの人じゃないからここの法律なんて知らなかったことにすればいい」


「ホウリツってなんだ?」


「守らなきゃいけないルール。破ったら罰を食らう」


「ああ、仕事とか」


「そう。ソラ、乾杯」



 カチンとグラスを合わせて少しだけ飲む。前ほどウッとはならなかった。おばちゃんを思い出した。



「森の奥でこのぶどう酒作るおばちゃんが動物に襲われて死んだんだ、けど」



 違かったんだなと俺は呟く。



「違わないよ。殺したのもニンゲンっていう動物だ」



 吐き捨てるように酒を飲むその人はまるで別人で。ただ怖かった。

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