第7話 ワイン 孤島 探偵(単語使わず)

 蝉の鳴き声がうるさい。

 太陽の熱がうるさい。

 まるで俺をけしかけているみたいだ。



 生まれた時からここにいるのは俺だけだ。

 そうおばちゃんは言う。おばちゃんは葡萄をおいしい飲み物にする達人らしい。見た目は血みたいでおいしくなさそう。みんな楽しそうに飲むのに俺は飲むな、と言われている。大人にならなきゃダメらしい。隠れてこっそり飲んでやっぱりおいしくなくて、それにすぐバレた。



「みんなは生まれた時はどこにいたの?」


「もっと白くて冷たいところだよ。ここみたいにあったかくない。お前は特別なんだ」



 おばちゃんは酔っぱらいながら歌うように答えた。それからしばらくしておばちゃんは死んだ。森の奥で見つかった。動物は怖いぞ、とおじじ達が教えてくれた。森の奥には入るな。俺らが狂暴なやつらをやっつけてやるからな、と。


 だけど俺はあの日知ってしまった。

 朝まであいつが帰らない日、夕方に家を出て行ったあいつの後をつけた。森の奥に広がっていたのは見たことのない景色だった。白くて冷たそうな壁が続いている。壁なんだろうか。見たことのない素材でできている。



「君らのいる所はこの辺一帯からポツンと取り残されてる。海のように離れているんだよ」

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