第5話 鉈 病院 逃(七五調)

 ここには病院もある。まあ設備が悪い。年寄りたちはそこへ通い、病人は泊まる。あふれたものは家にいるしかない。ソラの仕事はその家々を回り病人の世話をすること。ここには病人と老人、その他が集まってくる。今厄介になっている仕事場の奴らはここをゴミ捨て場と言う。または牢獄。入国してこの地に行きたい、寝泊まりしたいと伝えると変わり者だと言われた。刺されても病気になっても知らないと言われた。


 今日はとなりの爺さんと薪割りをしている。ここの爺さんたちはソラが言うほど頼りなくはない。



「よう新人、本格的に寒くなる前に全部割るからな」


「はい」


「ここには機械はいらねえよ」


「そうですね」



 ぶんっと振り下ろされる鉈。この人は僕を新人と呼ぶ。いずれいなくなるけど僕もそう、彼と同じ犯罪者だ。終身刑はここで暮らすこと。この森の奥地には逃げないように門番がいる。まるで国境だ。それほどにこの森の奥には発展した国がある。ここは森の奥地にある国のいらないものが集まるところだ。むしろこの地が森の奥地なのだ。



 だけど彼は知らない。皆僕に言う。


 お前はよそ者、いなくなれ。

 ソラはここの子。

 知らないままで、いいのだと。

 知らない方が、いいのだと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る