第4話 紋 戦場 妖精(いつもと同じ500字で)

「鍵くらいかけたら」


「壊れてるんだ」


「直そうか?」


「いい」



 彼はよく旅の話を聞きたがる。



「僕のところには暗証番号と指紋が必要で、その人じゃないと開けられない部屋もある」


「そんなの機械が壊れたら開かねえんじゃねえか」


「そのとおり」


「そん時は?」


物理攻撃ぶっこわす


「ははははっ!」



 君は機械をすげーという。でも実際に何か直そう作ろうと提案しても断られる。勝手に住み着いてるから、俺がいつここに来なくなってもいいように。彼がそう言うわりにはここはいろんなものが溢れている。



 土台があって足場があるだけ。ここは戦場だ。みんな居場所を求めて戦っている。


「君は信じるかい?神、幽霊、精霊、見えざるものの力を」


「ずいぶん一気に」


「僕は全て信じられない、夢も遊びもない男さ」



 だからここで君を見つけた時、僕は内心驚いた。本当にいるもんなんだなあ、と。明かりがついててノックをして、子どもが出てきて、君は消え入りそうな心細さがあった。いかにもだった。どこでもいいから休みたくて僕は話しかけた。だけど君はだいぶ口が悪くて、ふざけるな、俺はここにいると言った。僕を死にそうだと表現した。


 ここには死にかけた奴らがいる。僕もそうだと思った。



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