第2話 パンクバンド結成
「俺、やりたいっす!」
カンちゃんが一番に声をあげた。
「マジ、カッケーっすよ!雷に打たれた感じっす。俺はちっちゃい頃から町内会の和太鼓クラブに入ってるからドラムは任せてよ。太鼓が二、三個まわりに増えるだけっすよね。それに俺、すでに結構ファンがいるっすよ!」
と豪語するカンちゃんこと
「その話乗った。むちゃむちゃカッコいいやんけ。このヴォーカルいっちゃってるやんな。名前なんて?ジョニーなに?この曲コピーすんの?おれ英語得意、得意。つか、英語っぽい言葉しゃべるん得意やで。完コピしたるわ。意味わからへんけど」
物真似が得意なお笑い好きの小6からの悪友、ミッチーこと
そんでもって、こいつ。
「あー、荻窪くん...」
俺は、まだトマト色に顔を赤らめている荻窪くんを見た。
「君にここに来てもらったのは他でもない、君、ギター弾けるよね。俺たちと一緒にバンドやらない? 一緒に十月の学祭で一発ブチかましてやろうぜ。今から練習すれば絶対間に合うし、どうかな?こういうの」
「うわー! こういう激しいの奏でてみたかったんです。僕」
パンクロックとはどう見たって無縁だろうと思われるキャラの荻窪くん、
「カッコいいなあ。パンクロックってアルアイレ奏法しなくてもいいんだね。あっ、僕、椅子に座ってでしか演奏したことないのだけど、あんなに激しくアクションしながら弾けるかなあ...」
髪を七三にピシッと分け、銀縁の眼鏡の荻窪雅臣は、俺やミッチー、カンちゃんの住む下町商店街付近ではなく、学校をはさんで反対側の山手、お金持ちエリアの結構いいところのおぼっちゃまらしく、ただ同じクラスでダチってわけでも無いけど、クラシックギターを小さい頃から習っているという噂を聞いた。バンドにはギターリストが不可欠なのだ。荻窪くんはパンクロックとは対局に存在する人。そんなことは明らかだが、ようはギター。彼はギターが弾けるのである。なのでダメもとで声をかけてみた。俺には何のこっちゃわからなかったけれど、それはそんな彼の素朴な質問だった。
「大丈夫、大丈夫。パンクって世の中の不満をぶちまける音楽だから。勢いでOK。ソウホウ? 何でもOK。とりあえずスリーコードで奏でてくれると大体オッケー、オッケー。練習すればすぐに立って弾けるようになるって。それと、俺がかっこいいニックネームを付けてやるよ。えーと、荻窪だから...うん、今日からお前はオギーだ」
と、俺は思いつきでいってしまったが、
「オギー? オギー。僕、オギー...」
オギーは嬉しそうに照れて笑った。
そしてこの俺、
こうして高校一年の初夏、熱気ムラムラの屋上で俺たちはパンクバンドを結成した。
「バンド名、決めやなあかんな。なんにする?」
ミッチーは残りの牛乳を飲んでいる。
「なんか、カッコいい名前がいいっすね」
二つ目の焼きそばパンをカンちゃんは頬張った。
「実は、バンド名、もうすでカッコいいの考えてあるんだ」
俺はコロッケパンを頬張りなが得意気に言った。
「なんですか? バンドネーム」
オギーが目を輝かせている。
「なに? なに、なに?」
他の二人も興味深そうに寄ってきた。
「知りたい?」
「うんうんうんうん」
うなずく野郎三人。
俺は声も高らかにいった。
「オーケー、その名も、『エッチ・ピストルズ』だ!!」
「ブハーッ」
「ゴホッゴホッ」
「エッ、エッ、ええー?#@%♂♀$★~」
ミッチーは牛乳を吐き出し「お前、もうちょいひねり入れろやー。直訳やん。くそだっさー」とあきれて言って、カンちゃんは焼きそばパンをつまらせてむせ、オギーは再びトマトのように真っ赤になった。
「おまえらさ、さっきから何いやらしいこと考えてんの? エッチは
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます