9月 ①
二学期が始まってしばらくたったからか、クラスメイト達は僕の右腕の包帯姿に慣れてきたようだ。
最初の頃は、左手で文字を書くこともおぼつかなかったが、それも上達してきたように思える。
「計画」の帰り道で軽自動車と衝突事故にあってしまい、僕は意識がとんでしまっていたらしく、ハルが急いで119番をかけてくれたと病室のベッドで聞かされた。
右腕と足の骨を数本骨折して、全身に生々しい傷ができたが、入院するほどでもないと判断され、次の日には父の車で家に帰ることができた。
両親にはこっぴどく叱られたし、僕の黒い原付バイクは修理が不可能らしく、廃車になってしまった。
3時間目の体育の授業を見学し、クラスメイトより一足先に教室へ戻っていると、トイレから佐々倉が両手の水を弾きながら出てきた。
そこで僕は、「計画」の数日前から今日まで一度も佐々倉と会っていないと気づいた。
「おう、なんか久しぶりだな」
「本当に」
佐々倉はちらりと僕の右腕を見た。
「お前も鈍臭いことしたな」
「…は?」
佐々倉の態度はいつもと何も変わらないのだが、僕の何かがけなされたような気がした。
「いや、交通事故だよ。どうせぼーっとしてたんじゃないのか」
「……」
「おい、どうしたんだよ。冗談も通じなくなっちまったか」
「何が…」
出そうになった言葉を飲み込んで、僕は佐々倉に背を向けた。
そして、それから僕は二度と佐々倉と口をきかなかった。
家に帰るとすぐに僕は部屋にこもった、テレビはどうでもいいことを垂れ流しているだけだし、家族と話しても何も楽しくないからだ。
それでもお腹はすいてくるので夕飯を食べにリビングへ行き、体を洗いたくなるのでお風呂に入る。
骨折のせいでアルバイトができないためか、ここ最近はずっとこんな日が続いていた。
そして、本の中の老人は海から帰ってきてライオンの夢を見た。
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