7月 ②

期末テストも終わり、夏休みが始まるまでは午前中で授業が終わる時期がやってきた。

そう、すぐそこまで迫っているのだ、夏休みが。

昼の1時前、響とハルと廊下で話をしていると、僕らに誘いの声がかかってきた。

「おい『深夜組』、今から飯行かないか?」

佐々倉は「計画」のことを話してから、僕ら3人をまとめてこう呼ぶことがたまにあった。

「今からちょうど、ラーメン屋に行こうって話してたところだが、作戦会議をするんで、お前は連れて行けない」

「俺も混ぜろよ、別にいいだろ」

「いいや、駄目だ。悪いが他の友達を当たってくれ」

「元とハルはどう思ってるんだ?」

「僕は全然いいよ」

「俺も。作戦会議なんてしないしね」

「佐々倉、この2人がいいやつで良かったな。よし、行くか」

「響、それに元、ハルありがとう」

どうやら茶番は終わったようだ。


僕らはテーブル席に着くなり、すぐにベルを押して半チャーセット四つを注文した。

やはり、ここのラーメン屋はこれに限る…。

外の気温のこともあってか、全員がお冷をまるで好物であるかのように飲み干す。

「それでお三方、日程くらいは決まったのか?」

「線路沿いに死体を探しに行く日のことか?」

響がわけのわからないことを言い出したので、僕とハル、さらには佐々倉さえも無視をした。

「多分、8月になるんじゃないかな。原付バイクも買わなきゃいけないし」

「そうか。お金の問題は解決したんだな」

「元はほんの少し前に、やっと目標金額に達したもんね」

「本当に遅かったよな。俺とハルは5月にはもう終わってたのに」

「申し訳なく思ってるよ」

「いつ買いに行くだ?今日にでもバイク屋に行ってこいよ」

「今日は休みらしい。明日3人で行くつもりだけど、佐々倉も行くか?」

「なんで俺が行くんだよ」

「それもそうか」

何気なく厨房の方を見てみると、僕らのセット四つが出来上がったらしかった。

他の4人もほぼ同時にそれに気づいたらしく、一斉に唾を飲んだ。

友人同士の会話など、このラーメン屋の半チャーセットの前では二の次なのだ。

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