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 別府えにしの転校の発表があってからというもの、クラスはその話題で盛り上がっていた。


 私が知らない間に、別府えにしとイケメンバカは付き合うことにしたようだ。別に私が知っていようといなくても構わないのだが、それでも、私以外はそうは思わなかったらしい。



 一緒に二人でテスト勉強をしていたり、二人一緒に私の風邪のお見舞いに来たりしていたのに、付き合い始めたのは6月の終わりということだ。すでに最初のテストのときに仲良くなって付き合い始めたと思っていたが、そうではなかったようだ。



 付き合いだしたタイミングが微妙なのが気になった。6月の終わりということは、別府えにしが親から転勤を言い渡された時期とちょうどかぶっている。もしかしたら、転校を知っていたにも関わらず、彼女の方から告白した可能性がある。




 あいつらの告白や付き合っている様子など、正直、私は聞きたくもなかったし、むしろ、あのイケメンバカが、私の手から離れてせいせいしたくらいだと思っていたのだが、詳しく聞く必要がある。



 別府えにしはイケメンバカと真剣に付き合う気はあるのか。ただの遊びなのか。幼馴染という言葉にやけに固執していたことと、今回の告白は関係あるのか。気になりだしたら止まらない。



 あの二人がつき合いだしたという情報をクラスメイトから聞いた私は、詳しく内容を聞くことにした。





「ねえ、別府さんとイケメンバ、としやがつき合いだしたって聞いたけど、どっちから告白したか知ってる。」



 部活をしている最中に、たまたま別府えにしが転校の手続きで部活をやすむという連絡が入った。彼女本人がいない間に聞いてしまおうと、彼女とイケメンバカの話をきいたら、同じクラスの部員が教えてくれた。


 私が予想した通り、別府えにしの方からイケメンバカに告白したそうだ。



 イケメンバカは即座にOKを出して、ようやく正式に付き合い始めたようだ。そこで、別府えにしの転校話が出てきたので、二人は今、もめているらしい。




「告白したのは別府さんからなのに、その別府さんが、自分から『転校して、遠くに離れてしまうから、別れよう』と言い出してもめてるらしいよ。」


「それって、別府さんの都合だよな。とはいえ、としやは今、別れたくないと駄々こねているみたいだぞ。」


「あやな、別府さんみたいに薄情な奴がとしや君の気持ちをもてあそんで捨てるみたいだから、これはチャンスよ。あんたがとしや君の傷ついた心を癒してあげるのよ。」



「だから、何度も言っているけど、私はあいつのことは嫌いなんだって。前にもクラスではっきり言ったはずだよね。」



 

 どうしても、みな、大好きな三角関係に発展にさせたいようだ。この手の話題は少女漫画では毎度おなじみの展開だ。


 大抵の場合、男は付き合いだして、幼馴染の女がいない日常に違和感を覚え始める。そして、最終的に幼馴染の良さに気付いて、幼馴染の女と付き合うことになるのだ。

 

 今回は、転校生から告白して、転校生が振ってしまう状況だが、その程度の誤差は気にされないらしい。



 私はその展開がどうにも嫌だった。不愉快といってもいい。転校生の性格が悪すぎて、幼馴染の株があがるのも問題だが、それにしても、最終的に幼馴染と落ち着くのが気に食わなかった。




 今、目の前で繰り広げられている茶番は、まさに少女漫画さながらの展開だった。



 ということは、この後、イケメンバカは私のところに戻ってくるということだ。なんとしてでもその展開を防がなければならない。戻ってきたイケメンバカをなぐさめるなど、死んでもごめんこうむりたい。



 これはあいつと縁を切る絶好のチャンスだ。これを逃せば、きっと中学を卒業して高校に入るときにしか縁を切るチャンスは訪れない。



 私が現在起きている茶番について考えていると、予想外の展開に陥ることになる。これにはさすがの私も驚きだった。


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