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テストの結果は予想外の展開となった。クラス内も騒然としていた。これまた前回と同じように各授業でテストが返却されていった。
国語、数学、英語とテストが返却されていったのだが、そのどれにも100点がいたという。さらには、オール満点という離れ業をやってのけたすごい人がいるといううわさも流れていた。
確かに中学一年生の二回目のテストなので、100点が出るのは不思議なことではないと思う。かくいう私も、一回目のテストでは満点を取ったし、それ以外も満点に近い点数を取ることができた。
しかし、すべて教科で満点と、満点と満点以外の点数を取ったというのは、点数は近いが、大きな差だと私は思っている。満点とはノーミスということであり、完璧な回答をしたということだ。一教科だけならまだしも、それが5教科すべてとなるとすごいと思う。
そんな偉業を今回のテストで達成した人物がいるという。いったい誰なのか、私も気になるところである。そして、その完璧な点数をたたき出したのはまさかの人物だった。
「テストの結果を返すぞ。点数が間違っている奴は放課後までに先生に伝えること。」
テストがすべて返された日、同じく点数と順位が書かれた紙が渡された。食い入るように順位と点数を凝視しているクラスメイトを横目に、私も同じように渡された紙を確認する。
私の今回のテストの点数は前回と同じような結果だった。100点もあったのだが、やはり最後の見直しが甘かったのか、すべて満点とはいかなかった。
そうは言っても、前回のテストはそれでも学年一位をとれたのだから、今回も一位の可能性はあるかもしれない。楽観的に考えていたが、その考え方は甘かったようだ。
確かに今回のテストは万全のテスト勉強ができないまま迎えて心残りの点数であった。それでも他の子と比べれば十分に良い点数である。
「高田さんは2位だったんだね。でも、すごいじゃない。学年2位だよ。120人いる学年の中でナンバーツーなんてすごいことだよ。たとえ、前回から一つ順位を落としたとしても、誰も別に文句は言わないわよ。別に一位じゃなきゃ意味がないなんてことはないからね。これはたかがテストだし。」
例のごとく、私の点数を横から覗いてきたのは別府えにしだった。やけに私の順位をけなしてくるのはなぜなのだろう。いちいち、人をイラつかせるような言葉選びで私に話しかけてくる。
「なになに。学年2位って言葉が聞こえてきたけど、もしかして、高田さんが学年2位ってこと。すごいじゃん。前回に続いて天才じゃん。おめでとう。」
「あやなが二位ってことは誰が一位何だろうね。それはいいとして、あやな、今回もおめでとう。」
私たちの会話を聞いていたクラスメイトが次々に私に話しかけてくる。
「ありがとう。まあ、今回もテスト勉強は結構やったつもりだから、それの成果が出たのかな。あとは日ごろの予習、復習の玉ものかな。」
アハハと苦笑いを浮かべながら、私はあいまいに言葉を濁してクラスメイトの会話から抜け出そうとした。とはいえ、そうは問屋が卸さないと、クラスメイトはなおも食い下がってきた。
「やっぱり普段の勉強が大事だよね。」
「付け焼刃の徹夜勉強だけじゃあ、だめかあ。」
「いい点数とる勉強法を教えてよ。」
「あやなの順位ばかりじゃなくて、俺の順位も聞いてくれよ。」
さらに面倒くさい奴が会話に参戦してきた。今はすでに放課後であり、本来は部活に即座に行くべきなのだが、クラスメイトの大半は、テストの順位の方が部活より大事なようだ。私としては、面倒な奴も絡んできたので、即座に部活に行きたい気分だったのだが、そうもいっていられなかった。
「としや君の順位なんか聞いてなんかいいことでもあるのお。」
「だってとしやってぶっちゃけそんなに成績良くないでしょ。それこそ、あやなにべったりで勉強教えてもらってたのに全然だったじゃない。」
「そうそう。」
「今回の俺は一味違うのだ。なんたって、あやなみたいな教えるのがへたくそな奴じゃなくて、えにしが教えてくれたからな。」
ふふんと、得意げに言ったイケメンバカは、バーンと効果音が付きそうな勢いで自分の点数と順位が書かれた紙をクラスメイトに見せつけた。当然、私にもその紙の内容は読むことができた。
「学年10位って……。」
「これ、ほんとにとしやの順位表でまちがいないよね。0が一つ少ないミスなんじゃ。」
「テストの点数も順位の桁も間違ってるのかも。先生に報告して直してもらった方がいいよ。嘘は良くない。」
私がいじられたかと思ったら、今度はイケメンバカがいじられる番だった。人間、興味がすぐに他人に映るので、その隙をつくのは大事なことだ。
会話の内容がイケメンバカの順位と点数に向きかけているのを察して、私は気配を消して教室から抜け出そうと試みた。
「嘘だなんてひどい。私が一生懸命勉強を教えて、としや君もそれにこたえようと頑張って勉強した結果だよ。そんなにとしや君をいじめないで。本人だって、信じられないと思うから。勉強を教えた私だって、いまだに信じられないんだから。」
いなくなったかと思っていた別府えにしもここで会話に入り込んできた。
これ以上の面倒事は見ていられない。私は全力ダッシュで教室から抜け出した。
幸い、別府えにしの言葉に気を取られていて、誰も私を追いかけるものはいなかった。
教室から抜け出した私は、その後部活に向かったのだが、その日はなぜか、別府えにしは部活に来なかった。部活を休む際は、きちんと顧問や部員に連絡を入れている彼女だったが、連絡も入れずに休んでいた。初めてのさぼりだった。
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