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 さて、このままこの顔で教室に戻るとクラスメイトにいろいろ言われそうだ。まずは保健室によって手当てしてもらおう。それから今日はこのまま早退しよう。そう考えて私も図書室を後にする。

 

 図書室の外では男がなぜか窓によりかかっていた。私以外に図書室にはいないが、まさか私を待っているはずはない。そのまま通り過ぎようとすると、声をかけられた。


「その顔、りんにやられたのか。」


「どう思いますか。最愛の彼女「りんちゃん」が私に泥棒猫と叫んだ挙句、殴ってきたのですよ。そんな女が好きなのぞむ君はくそ最低男かもしれませんね。女を見る眼がない。まあ、類は友を呼ぶと言いますしね。仕方ありません。思えば、うちのクラス全員、彼女と類友だと思いますよ。なんとも嘆かわしい限りですね。そう思うと、今回の転校は運が良いのかもしれません。また来年もそんなメンバーと同じクラスになるかと思うと、ぞっとします。」


 またもや、私の口から暴言が飛び始める。別に女に泥棒猫と言われてはいないが、つい嘘をついてしまった。ここまで言う必要は今回もなかったのだが、つい言ってしまった。


「………。」


 私の暴言に驚き、呆然としている男を通り抜けて、私は足早に保健室へ向かった。そういえば、いつもは見ないのだが、たまたま朝、テレビをつけたらちょうど占いをやっていた。



「今日の山羊座のあなたの運勢は最下位。我を忘れて感情のままに行動してはNG。今後の生活に支障が出てしまうぞ。冷静に落ち着いた行動を心がけた方が吉。ラッキーカラーは赤。ラッキーアイテムはばんそうこうだよ。」


 占いなんて信じたことはないが、まるでこの占いは私のことを言っているみたいだ。占いの忠告を守らずに行動してしまった。別に後悔はしていないし、今後の生活に支障が出ることもない。逆に今後の私の計画がスムーズに進められるというメリットまで生まれた。



「キーンコーンカーンコーン。」

「占いなんてあてにならないということだな。」


 保健室に向かいながらつぶやく私の声は、昼休み終了のチャイムに重なり、誰にも聞こえることはなかった。




「すごい腫れていますね。いったいなんでこんなことになったのですか。」


 保健室に行くと、ちょうど保健の先生がいたので手当てしてもらった。腫れている場所につけられた消毒液がしみて痛い。保健の先生は若い女の先生だった。優しそうな人当たりがいい、児童に人気の高い先生だった。


「ただの子供の喧嘩ですよ。ただし、これから大人を巻き込んだ大喧嘩になることは必至でしょうけど。」


 私が答えると、先生は微妙な顔をする。いったい何を言い出すのだろう、このガキはと思っているのかもしれない。とはいえ、小学生の言うたわ言とでも思ったのだろう。特に何も言われなかった。


「手当てしてくださってありがとうございます。今日はもう早退してもいいですか。この顔をクラスメイトに見せたくないので………。」


「確かにこの顔は見せられないわね。でも、誰にどういう状況でやられたのかを私と担任の先生に説明はしてもらいますからね。」


 その後に私が保健室に来ていることはクラスのみんなや先生は知っているのかと聞かれた。私は一言、いいえとしか答えなかった。


 それを聞き、しばらく考え込んだような顔をしていた保健の先生は、仕方ないといった感じでイスから立ち上がり、私に5時限目終わるまでここに居るように伝え、教室から出ていった。


 

 私はそれを了承した。ベットを使ってもいいと言われたので、言葉に甘えることにしてベットに横になった。興奮して疲れていたようだ。すぐに私は眠ってしまった。


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