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 お別れ会の準備は着々と進んでいるようだった。わたしが図書当番でいないときや、休み時間で教室にいないときにうまく進めているようだった。しかし、私がいない時だけで進めるのは難しいらしく、私をわざわざ教室から追い出すこともあった。私を追い出すだけではさすがに可哀想だと思ったのか、私の話し相手に抜擢されたのは、なんとあの男だった。


「ごめんな。みんな別府さんのことを驚かせようとしてお別れ会の準備をがんばっているから、しばらく僕と休み時間を過ごしてくれるとうれしい。」


 今日は昼休みの図書当番の日である。当然、私と男の二人きりとなる。男は浮かない表情で私に話しかける。なぜ、浮かない顔をしているのか。告白して振られた私といるのがそんなに嫌なのだろうか。


「そんなに私のことが嫌なら、私を教室から遠ざける役目を他の人に任せればいいのに。図書当番も来なくてもいいよ。どうせ人なんかめったに来ないし、一人でも問題ないから。」


 冷たく言い放つと男は急に慌てだす。おろおろとあたりを見回し、今度は私にだけ聞こえるように小さな声で話し出す。


「別に嫌なわけではないよ。告白を断って置いてそんなことを言える立場ではないんだけど。僕は本当は……。」




「なにしているのかなあ。のぞむ、ちょっとやってほしいことがあるから、一緒に教室に来てくれるかな。」


 男の話を遮ったのはあの女だった。女は引きずるように男を図書室から連れ出す。そして図書室から追い出すとまた戻ってきて、ドアにカギをかける。


「のぞむにちょっかいかけないでくれるかな。別府さんと一番仲よくしていたのがのぞむだったからのぞむに役目を与えたけど、勘違いしないでくれる。」


 言いたいことだけ言って、図書室から出ていった。ドアを閉める音がやけに大きく響いた。

 

 突然の女の来訪に笑いがこみ上げる。そんなことは言われなくてもわかっている。だからこそ、お別れ会のサプライズをこちらでも盛大に行おうとしているのだ。

 

 女は私に牽制しようとしていたのだが、あいにく私はすでに男のことはどうでもよくなっている。



 その後もことあるごとに私と男が二人で話しているところに女は乱入してきた。乱入してくるなら、最初から私と男を二人きりにしなければ良いだけだ。無視し続けるように男に言えばいいだけの話である。


 なぜそれをしないのか疑問に思い、考えても答えが出そうになかったので直接聞いてみることにした。お別れ会まであと3日というところで、ちょうどよい機会である。いつものように図書当番で男と二人きりだった時に、これまた話の最中に女は図書室に乱入してきた。男をこれまた追い出して私と彼女は図書室に二人きりとなった。

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