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「別府えにしさんですが、残念なことにお父さんの仕事の都合で、3月でこの学校を転校することになりました。」
ある日の朝、担任が朝のHRで、私が転校することを説明した。クラス内はざわざわとうるさくなった。私が転校することを純粋に驚いているようだ。
「別府さんが転校するなんて悲しい。ねえ、みんなで別府さんのお別れ会をしよう。」
「そうだな。りんの言う通りだ。」
担任の言葉に真っ先に反応したのは例の二人だった。二人が提案すれば、途端にクラスメイトも賛成、賛成と言い出した。
「決まりですね。半年という短い時間でしたが、クラスのみなさんはえにしさんと過ごせて本当に楽しかったようです。お別れ会、楽しみにしてくださいね。」
担任の言葉には気持ちがこもっていなかった。顔はにこりと笑顔を作っているが、ただそれだけで、全く悲しんだ様子は見られない。上辺だけの言葉で、全然私がいなくなっても構わないということだ。声が平坦で感情が全くこもっていなかった。
この担任にとっては、自分を尊敬しない、担任の自分に頼りもしないかわいくない児童であり、いなくなってせいせいしたとしか思っていないのだろう。私も別に悲しんでもらうことは望んでいないのでお互い様である。
お別れ会が開かれるということは、そこで何かクラスメイト、特にあの幼馴染の二人に記憶に残るような衝撃的な事件を起こせるチャンスである。何をすればいいだろうか。クラスが私のお別れ会について話し合っている中で、私はどんな事件を起こそうか考え、一人にやにやと気持ち悪い笑みを浮かべていた。
それから一週間、何をすればいいか必死で考えた。お別れ会当日にクラス全員の上履きをごみ箱に放り込み、靴下で一日を過ごさせる。それとも、クラス全員の上履きに画びょうを一つずつ入れていくというのはどうか。クラス全員の提出物を全部破いて花吹雪のように校庭にばらまくか、例の二人の作品だけはあえて残して、黒板にでも貼って、そこに大きくハートマークでも書いておこうか。
さすがに器物破損になるので教室のガラス全部を割ることはやめた。そこまでやってしまうと、大問題に発展してしまう。それに次に使う後輩たちに迷惑をかけてしまう。
クラス全員の秘密を黒板に書いていくのはどうだろう。これまでクラスメイトを観察してきたのでそれくらいは余裕である。しかし、それでは筆跡で犯人が特定されてしまう。それならクラスメイト一人一人の秘密をパソコンに打ち込んで印刷すればいい。二人の秘密だけは特盛で、あることないことを書けばいい。担任の秘密も書いておかなければならない。担任にも私のことを印象つけておかなければ気が済まない。
やりたいことは山ほど出てきた。どれも魅力的でクラスに驚きを与えることができそうだ。作業はもちろん一人でやることになるが、驚いたクラスメイトの顔が見られると思うだけでやる気がわいてくる。私はひそかに計画を立て、お別れ会当日を楽しみにしていた。
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