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班活動での重要性が問われたのは家庭科の調理実習だった。
今回調理するのはご飯と味噌汁。米と、味噌汁の材料は各班のメンバーがそれぞれ持ち寄るというものだった。一人一つの材料を持ち寄ることが条件らしい。班のメンバーをいかに信用できるかにかかっている。
むろん、そんなことをすれば、材料を忘れた場合、私の損害は大きく、これは避けたいところである。特に私の班はそんなことをすれば、最悪の場合、材料が集まらずに調理自体が危うくなってしまう可能性もある。
私が全部の食材を持参するというのが一番安全な方法ではあるが、それでは私だけに費用が掛かり、不公平だ。先生のチェックが入った場合、説明のしようがない。私はうまく説明できる自信がある。しかし、私以外がだめだ。この案は却下せざるを得ない。他に良い方法はないものか。
今回の調理実習は、私を無視してきた幼馴染の男に私がいかに優秀な女か証明し、さらに幼馴染の女に私の方が男にふさわしいか見せつける場と考えている。つまり、クラスで一番おいしくご飯と味噌汁を作らなければならない。
そうすることで私のハイスペックさを印象つけることができる。ついでに担任にはこの面子でも何の問題もなく、差別にもハンデになっていないことを証明できる。
男に料理上手なことをアピールし、好感度を上げる作戦である。ちなみに女の方は料理が壊滅的であると調査済みである。加えて、担任に差別に屈しないという強い意志を示す機会でもある。
材料集めで私が考えたのは、調理実習前日の放課後に一緒に材料を買いに行くということだった。それなら一緒に買ったことを先生に説明できるし、グループの絆を高める行動として評価される。買い物で発生した代金は先に私が払うことにした。
調理実習が終わったら、それぞれ3人の家に赴き、徴収することにした。工夫も何もない案だが、仕方ない。これしか方法が思いつかない。これなら確実に材料をそろえることができる。買いそろえた材料は私が責任をもって持ち帰ることにした。私が忘れなければ、これで材料の心配をしなくてもいいということだ。
調理実習は成功に終わった。無事に一緒に買い物に行き、お金も何とか集めることができた。ご飯もふっくらつやつやに炊くことができたし、味噌汁も赤味噌と白味噌の合わさった程よい味のコクがあるものができた。
担任にはたいそう褒められた。当たり前だ。私にかかればこんなことは朝飯前だ。私一人で作っていては班活動としての評価が低くなることはわかっていたので、3人には野菜をピーラーで剥いてもらったり、鍋をかき混ぜてもらったりした。
ご飯を炊くときの水の量や味噌汁の味付けは全て私が行った。大事なことは私がやりつつ、誰でも出来て失敗が少なそうな野菜の皮むきや鍋をかき混ぜることを3人にはやらせた。
後片付けもしっかり指示を出し、クラスの中で一番早く料理が完成し、片付けももちろん一番に終わった。協力して作っていることもしっかりとアピールできていたはずだ。
あの女と男の班にはご飯と味噌汁を多く作ってしまったと届けに行った。その班には女もいたのだが、ご飯も味噌汁も最悪の出来であった。ご飯は鍋に入れる水の量を間違えたらしく、おかゆのような代物だった。味噌汁は野菜が固く、味も塩辛くて、飲めたようなものではない。
班のメンバーは楽しそうだったが、私はごめんだ。いくら楽しくてもこんなくそまずい料理は食べたくはない。
男の評価は上々だった。私の株は急上昇したようだ。私のことをほめちぎってくれた。
「こんなにおいしい味噌汁は初めてで、毎日飲みたいくらいだ。」
一昔前の結婚の時のプロポーズのようなことも言われた。ただし、すでに男のくそみたいな性格を知ってしまっているので、大してうれしくもない告白だった。
「ありがとう。家で手伝いをしているだけだよ。」
お礼を言うだけにとどめておくことにした。その際にしっかりと男の幼馴染と比べることを忘れなかったが。
「そんなに味噌汁が好きなら、りんちゃんに作ってもらったらいいよ。りんちゃんはのぞむ君のこと好きみたいだし、のぞむ君が言ったら、毎日でも作ってくれると思うよ。」
私は絶対にお断りだ。女の言うこと一つで態度を変える男なんていくら格好良くてもこっちからお断りである。
私の発言に男は苦笑いを浮かべた。男も女の料理ができないことは知っているらしい。女の方は悔しそうに私のことをにらんでいた。
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