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 無視されること以外に特にいじめのようなことは起こらなかった。無視すれば私が男のことをあきらめるとでも思ったのだろうか。アニメや漫画のように壮絶ないじめがなくてよかったとは思う。


 クラス全員から無視されたり、机に「死ね」「ブス」と落書きされていたり、金銭を要求されたりなど、無駄に悪い想像をしてしまった。もしそんなことが起こったらすぐに親に相談している。両親が私をいじめた子の親に怒鳴り込みに行くだろうし、それがだめなら、こんな学校にいる必要はないといって、すぐに転校の手続きしてくれるだろう。


 転校が多いことで、私に苦労をかけていると自覚し、心配してくれる優しい親である。少し過保護で、モンスターペアレント気味ではあるが、それで子供が安心して学校に通えるならそれはそれで問題ないだろう。そのような親にあたった担任は不運でしかないが。


 もちろん、私も何かしらの報復はするとは思うが、いじめられたら精神的に参ってしまい、自殺を考えてしまうかもしれない。そうなる前にやはりまずは親に相談すると思う。私の両親はモンスターペアレントといってもいいので、私が報復する必要もなく、いじめの問題は解決するだろう。相手の親に殴り込みに行き、こてんぱんにやっつけること間違いない。


 結果として、それは子供に伝わり、あの子に逆らうなということになってしまうかもしれないが、それで自殺を防ぐことができるなら別に構わないと思う。


 

 そもそも、私には地元で長く過ごすという経験をしたことがない。長くても3年くらいしか同じ地域に住んだことがない。地元の付き合い、地域との付き合い方というものはわからないし、わかる努力もしていない。どうせ転校するのだから別に地域ぐるみの付き合いを頑張る必要がないからだ。両親もそのような考え方だから似たもの親子というべきだろう。


 それなのに私の名前には「縁」という名前である。縁を大切にしてきたことはないので、私は自分の名前があまり好きではない。「えにし」なんて変な名前だとしか思ったことがない。



 ということで、多少クラスでの人間関係が崩れても、数年我慢すれば、引っ越してしまう。私はいわゆるよそ者である。だからこそ、親も先生や子供の親に強気でいられるのかもしれない。


 かくいう私も同じようなものだ。どうせ、別れてしまうのだからということが常に頭にあるのは否定しない。


 

 ここで先生に相談すると考えなかったのは、先生はあてにならないと知っているからだ。先生たちも忙しいためか、児童の話を聞くことは聞くが、本気で対応してくれる人はなかなかいない。今回の先生は特にそのタイプだった。

 

 今回の転校先の担任は、女と一緒で排他的であった。どうやら私のことが気に入らないらしい。担任にも敵認定されてしまったようだ。どいつもこいつも世間が狭くてつまらない奴ばかりである。


 担任は腹いせに問題児の面倒を私にみさせることにしたようだ。全く、生徒も生徒ならその先生も先生である。



 私のクラス担任は若い未婚の女性で、男の子やかわいい児童が大好きだ。特に男の子が好きらしい。独身だから男が恋しいのだろうか。あからさまに男の子に対して甘い気がする。小学生に対してそうなのだから、あきれてものが言えない。男女平等などはなからありえない。差別社会はすでに小学生から始まっている。


 児童を叱るときも男の子には一見きつく叱っているように見えるが、大して気持ちがこもっていないのがまるわかりだ。叱り方がわざとらしい。それに引き換え、私たち女の子に対してはきつく叱らないかわりにねちねちとしつこくて、嫌味たらしさ全開だ。女の子の中でも先生に気に入られている生徒は違う。叱り方が甘く、猫なで声で気色悪い。


 クラスの中には先生のお気に召さない児童ももちろん存在するが、彼女が嫌いなのは私のようなタイプらしい。先生に頼ることをしない、先生を尊敬していない生徒。先生に媚びることをしない生徒も嫌いらしい。


 私は先生に頼ることなんてしたことがない。そもそも相談したところですぐに転校してしまうので、相談する時間がもったいないからだ。それにそんな短時間で先生を信用できるはずもないので、結局親に相談してしまう。それを知らない担任は、私が先生に頼りもしないクソガキだと思ったのだろう。さらには私は常に無表情のことが多いので、何を考えているかわからない薄気味悪い児童とでも思っているのだろうか。


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