第5話 日常…

…旅に出た。

行き先もない旅に出た。

目的もない旅に出た。


生まれて初めて旅に出た。

新たな世界が開かれる。

お金がなくて泣きながら。


ー数日前

「モンスター討伐じゃお金稼げないの知ってる?」

そこから話は始まった。

成り行きとはいえ特にやることもない僕は旅に出ることには賛同したが、もう施設の人の選別も無い中でどう暮らすかは考えていなかった。

何か良い案でもあるのかと期待しながらそう遥に問うと。

「ここに300万の大金が…」

…流石に僕も泣きそうになった。

僕を1人前にするためだけにこんな大金を1日で⁉︎

答えは1つしかない。

「僕が…僕がしっかりと働いていれば遥が汚れることもなかったんだ。本当にごめん。本当にごめん…。」

遥は一瞬驚いた顔をしてその後、顔を赤くしながら、

「変なこと想像しないで!」

そう言って頬を叩かれた。

…痛い。


ー現在

300万は遥がくじ当てたらしい。

まぁ何というかラッキーというか。

まぁくじで当たったお金であるし、ありがたく使わせてもらおう。

そうしてお金に困ることのない安定した旅を送れるかと思った時がありました。

すぐ近い街にアーチャーランドというゲーム場がある。

簡単にルールを説明すると1回500くらいのお金を使って50本ある弓のうちから3本だけが矢が入っていて、それで1メートル先の景品を当てる、いわばギャンブルだ。

弓の初心者でも当てられる距離なので運が良ければ1回で当てられる。

しかしぬいぐるみなんて1000ぐらいなので1回で当てられなければ損だ。

そんな無理ゲーするなら後で買いに行こうと必死に止めていたのだが。

そこで遥の前に映った景品、簡単に表すと「マッチョの人形」。

そこで遥の目が変わった。

まぁ他にも「ピンキーラッビットのぬいぐるみ」や「ブルーバイソンの1年乗車券」など、魅力的な景品はいくつかあったのだが。

たまに遥の感性を疑うことがある。

必死に止めようとする僕。

すると僕に対して遥が1言。

「私、失敗したことないんで。」

…あぁこれは終わった。


仕方ないので外の壁に寄りかかっている。

そこで今後の旅について考えている内に、病気が発症。

気がつくと遥が5つも人形を持ってホコホコした顔で帰ってきた。

…何故か僕に矢が刺さっている。

なにがあったのかを聞いてみると。

結果は…ひどかった。

どうしたら毎回矢が入った弓を当てられるんだ?

どうしたら弓が飛んでいくんだ?

どうしたら店の外にいる僕にまで矢が刺さるんだ?

しかもそれを獲るがためだけに何と200万も使ったのだ。

しかしそれでも取れるはずがなかった。

まぁそれでも100万も残っているのだからいいだろう。

そう思って甘く見ていたら、片目を眼帯で覆った老人の店員の優しい?一言。

「今まで使ったお金の半分の額を出してくれたら、この人形を5個プレゼントするよ。」

…あとは予想どうりだ。

「…買っちゃった。」

…こればっかりはもうどうしようもない。

もう旅やめようかな…。


そんなこんなで、アーチャーランドの近くでいつも通りの貧困生活を送る日々。

彼女も裕福な暮らしではなかったので特に嫌な顔はしないが。

…いい加減、川の水と食堂で残るパンの耳は飽きた。


そんな今日を生きる僕らのもとに、あんなことが起きるなんて…。










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あの日みた月を僕は覚えているだろうか? @yukibonjinn

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