第4話 船出…
「冒険に行こう!」
いつも通りの遥と過ごす夜、そう遥が声をあげた。
「…えぇ」
遥と出会う前日から冒険に入ってない。
無理に変わらなくても支えになってくれる人ができたことで有頂天であったかもしれない。
まぁ今でも遥のことはよく知らないのだが。
「私も助けてあげるから。」
いくら病気持ちだとは言っても男の端くれ。
こんな少女に心配されるのも恥ずかしいことなのだが。
「じゃあ…行ってみようかな。」
彼女は満足そうに頷き
「よし!じゃぁ明日、親方の鶏が鳴いたらここに集合ね。」
親方とは近所で慕われている胸筋が凄い優しいおじさんのことだ。
まぁ半分諦めかけていたことだし遥と話せるならと気持ち半分で
「わかった。」
と返事した。
ー翌朝
「ぎゃぁー」
「助けてくれー」
「俺には守るべき家族がいるんだ、頼む見逃してくれー」
「くそー将来は丸焼きになってデカイパティーのメインディシュになるつもりだったのにー」
そんないつも通りの鶏の鳴き声を聞いて目覚める。
親方は朝から元気だな。
近くの水道で顔を洗い眠気を覚ます。
いつも通りの日々なのだがいつもとは違うことは。
「ふわぁ…朝早過ぎない…」
遥がいることだ。
遥も家なんて持ってるわけではなく、近くの路上で寝ているそうなので一緒に住むことになった。
同じ屋根の下に男女二人きりとか少し恥ずかしい。
まぁ屋根なんて付いていないのだが。
不思議と遥といると病気が発症することもなく、こちらとしてもいいのだが。
「あの…服ぐらい着なよ。」
こんなに無防備な姿でいられるとこちらとしても恥ずかしい。
いくらなんでも僕をヘタレだと勘違いしすぎだ。
まぁ手を出すつもりはさらさらないけれども。
ー数時間後
「あのさ…寝るんだったらこんなに朝早くに準備しなきてもよかったんじゃない?」
そう彼女は寝たのだ。
僕に準備させといて寝たのだ。
「いやーやっぱり早起きは無理だなwまぁ昼ごろ活動する雑魚モンスターを狩りに行こう。」
反省の意は見れないようだったが、やはりその天真爛漫な笑顔をみるとなんでも許せてしまう。
あれ…もしかして僕こいつのこと好きなのか?
まぁ万年ボッチに話しかけてくれた彼女しか知らないからだろう。
どうせ僕は万年DTですよ…。
そんなこんなで草原しエリアに着く。
冒険者はモンスターを倒すことでレベルを上げる。
なぜレベルが上がるのか。
そもそもレベルとは何か。
そんなのは自然の法則で成り立っているからとしか言いようがない。
まぁ簡単に言えば生まれつきレベルが脳らへんに記されるもんがあるんだろう。
しかしいくら野良モンスターを倒してもお金にはならない。
モンスターを倒すことで数名の貴族が喜ぶくらいだろう。
レベルが上がった冒険者は貴族の屋敷で雇われやすくなるくらいだ。
それでも不安定な収入の冒険者よりも良いからみんなレベルを上げたがる。
しかしいくらレベルを上げても貴族屋敷の警備員が最高峰だ。
そう、冒険者なんて貴族の犬に過ぎない。
そんなことはさておき、早速モンスターの討伐にかかる。
「どれにする?初めは…」
そう言って彼女が向けたダガーの先にいたのは
「キノコ?」
そこには白いキノコのような物体がスクワットをしていた。
「うん。あのキノコ型モンスターはマッシュスクワッドって言うんだけど、見た目のがたいの良さとは反対に運動音痴でね…毎日スクワットを欠かさない努力家のモンスターなんだ。その分経験値は詰まっているし初心者には美味しいモンスターだよ。」
なるほど、確かにレベル1僕がこいつを狩ることができればレベルが3は上がりそうだ。
覚悟を決めて1歩踏み出して一度も使えたことのないショートソードで斬りかかる。
「ぐっっ…」
鈍い音を立てて崩れ落ちたキノコを見てフラグになるかもしれないと思いつつも
「やった…のか…」
つい口に出してしまったその時、
「ブっしゃ」
なんということでしょう。
フラグ建築から回収まで僅か3秒。
倒れかけたキノコが僕の顔に向けて白い煙を吐き出した。
「うっ…っ………。」
ふっと意識が遠のいていく瞬間、やはり僕にはモンスター退治なんて無謀だと改めて感じた。
それとともに、駆け寄ってくる遥は驚いたような、申し訳なさそうな、しかし少し笑ってるかのように見えた気がする。
「…ビキ…ヒビキ…響!」
騒がしい声で目がさめる。
いつもの路地裏…ではなくベッドの上で横たわっていた。
一瞬状況が飲み込めなかったが、側に居る遥を見て思い出した。
「…良かった…目を覚まさなかったらどうしようかと思ってっ…。」
そう言って泣きながら僕に抱きついてきた。
…恥ずかしい。
一向に泣き止まない遥を見てどうすればいいのか慌ててしまう。
女の子を泣かせるなんて本当に最低な男だ。
彼女は良かれと思って…。
何か言わなきゃ、そう思って出た言葉は、
「…本当にごめん。」
何でこんな言葉しか出ないんだ。
ほら遥もどう返せばいいのか慌てているでないか。
100点満点中0点だ。
落ち込んだ僕を見たからなのか、はたまた泣いていることが恥ずかしく思えてきたのか、理由はわからないが突然遥は立ち上がって、
「この街にいても君は自由に生きられない。周りばかりを気にして、怯えている君を見るのはもうたくさんなの。旅、旅に出よう。君が一人でも十分生きていけるようになるまで私がサポートする。私一度決めたことは曲げないから。」
そう力強く言った遥の背中は大きかった。
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