恋ベル23

 次の日、学校へ行くとクラスはクリスマスの話で盛り上がっていたが私と井下は白けた顔をしてた。


「何が楽しんですかクリスマスとは?」

「クロ。クロなりに黒いオーラが増えてきてる。まぁ毎年の事だからね。」

「クロ言うの禁止。けどシザもバイトだし桜井さん海外勤務中。」


 二人でため息をつくとチャイムがなり担任が教室に入ってくる。二学期最後の成績表を一人ずつ返していく。私は自分の成績表を見て安心し井下は私の成績表を覗き込む。


「さすがだね。私は今回頑張ったからまだ良かった方かな。」

「クロは将来何かやりたい事あるの?」

「あったら話してるよ〜。ないから悩んでる。誰か拾ってくれないかな〜?大学もいかず無職だったらどうしよう。」

「無職って。まだ大丈夫だよ。それに何がしたいとか決まってないからね。なんとも言えない。」

「シザはいい大学もいけるだろうし。けどまぁいいじゃん将来あるようなもんだし。」

「…店長も言ってた。けど働いてみたい。絢と並んでみたい。」

「だよんねぇ。」


 将来の事色々と考えてるが答えが見つからず悩んでいた。二学期終業式も終わり、クリスマスの日バイトに入る。お店もカップルでいっぱいでカップルを見ていると少し羨ましくなっていた。


“今年のクリスマスもすごいや。絢も明後日帰国だけど、結局メールは来るけど電話ができていないし。すごく忙しいんだろうねぇ。ここんとこ社長室のソファの寝とまりでベットに寝たいかも。”


 バイトが終わり葎成の会社に帰ってくる。IDカードを渡されていた為そのまま自動改札機に入り社長室まで向かう。ノックすると返事があり私はそのまま入っていく。


「おかえり。」

「ただいま。」

「絢桜。今日は帰るぞ。」

「家にですか?」

「ああ。俺も家に。一通り大丈夫そうだから。あと少し待っててくれ。」


 葎成はそう言うとすぐに仕事を開始する。二十時になるとパソコンを消す葎成の姿があった。


「帰るぞ。」

「あっ。うん!」


 荷物を持ち葎成の後に続きエレベーターを待っていると葎成は私に手を出す。私は首を振る。


「か・ば・ん!…ったく。何を思ったのかわかんねぇけど。」

「ありがとう。」


 てっきり手を繋ぐ事だと思った。何を期待していたのかと思うと急に恥ずかしくなる。エレベーターを降りタクシーに乗るのかと思えば歩き出す。私はただ葎成に付いていくだけだった。暫く歩くと高層マンションにつき私はマンションを顔を上げては眺める。


「おい。行くぞ。」

「あっ。うん。」


 あまりにも見とれてしまい、エントランスもホテルみたいでエレベーターを乗ると最上階のボタンを押す。高く高く上がっていくエレベーターがまるで私の心の熱まで上がっていくようだった。エレベーター最上階で止まりゆっくりと降り葎成はカードキーで玄関を開ける。


“鍵じゃなくてカードみたいな?”


「どうぞ。」


 恐る恐る入ると自動的に電気がパチパチとつく。


「…勝手に電気が…じゃなくてお邪魔しま〜す。あっ煜さんの匂いだ。」

「俺の匂いって…。」


 いつも葎成の横にいると香水なのか、ふわっと心が癒されるような匂いがする。その匂いが部屋でしてた。その時、足元に何やらまるものが動いていた。私は咄嗟に下がってしまい葎成にぶつかる。


「!何やってんだ?」

「煜さんこれなんですか?」


 葎成は豆鉄砲食らった顔をし爆笑する。


「あははは。マジで?!あはは。こいつの名前はシルバーであっちにいるのがクローで後各部屋にいてる。」

「ロボットペットですか?何してるんですか?」

「あははは!本当腹いてぇよ!掃除機!掃除機!」


  葎成はお腹を抱えながら説明する。


「掃除機?」


 掃除機やらをじっと見ていると、葎成はそこにあった小さなゴミを置くと察知してすぐ掃除しにくる。私はその場に座り掃除機を眺め思わず拍手してしまう。


「マジで笑える。」

「でもこんなに沢山。」

「俺は家にいる事ないだろ、だからたまに帰ってきたら埃とかすごいからこいつらにお願いしてるというわけ。勉強なりましたか?」

「はい。大変勉強なりました。」


 靴を脱ぐと出されたスリッパに履き替える。


“うわ〜足の裏がふかふかしてる。”


 感動しながら部屋の中を歩き、葎成は一つの部屋のドアを開ける。


「絢桜。この部屋を使えゲストルームだ。」

「ゲストルーム?」


 部屋に入るとまた掃除機がお迎えにくる。そっと窓を見ると窓から見える絶景に釘ずけになる。


「うわぁ!すご〜い!夢の世界に来てるみたい!キラキラしてる。」


 葎成は部屋のドアにもたれ腕を組み微笑む。


「絢桜。ご飯どうする?また冷蔵庫何もないけど、食材買いに行くなら二階に食材売ってるが行くか?」

「うん。私、作るよ。」

「じゃあ。用意したら行くぞ。」


 二階の食材売り場に今日のご飯の食材買いに行く。私は何を買うか迷っていた、というのは高級すぎて訳がわからなかった。


「俺は和食が食べたい。」

「わかった。煜さん。なんですかこのの食材たちは?私に喧嘩売ってますかね?」

「ぷっ。喧嘩売ってない売ってない。必要なもの入れていいから後は俺が出すから入れちゃって。」


 手に取りながら食材をチェックしながら籠に入れていると途中で私は一つの商品に目が止まる。


「ひっ煜さん!籠もう一つ持ってきていいですか?」

「どうした?」

「これを買いたいので…。」


 指をさしたのは『コッペパルパン』キャラクターはパル君でパン生地にパイナップルが入ってるコッペパンだった。


「何個食べる?」


 葎成はコッペパルパンを一つ二つと入れていく。


「ストーップ!…一つでいいです。…ってか自分で買います。」


 葎成は私が敬語を使ったことで冷たい目で見る。


「ごっ…めん…だけど一つでいい。」

「じゃぁ。明日絢も帰ってくるから三つ買う。」

「あっありがとう。」

「さぁ。他は何かいるのか?」


 珍しいものを見つけて葎成に訪ねるたびに籠に入れられ、次第には籠が山盛りになっていた。そして互いに両手が塞ぐくらいの袋を持ち葎成の家に戻ってくる。荷物を置くと早速料理にとりかかるが葎成はリビングでパソコンを開いて仕事していた。


“本当仕事人間。煜さんは彼女作らないのかな?不自由はしてないって言ってたけど本当はどうなんだろ。”


 そんな事思いながら夕食を作っていく。料理ができテーブルに並べ葎成を呼ぶ。


「煜さん。できたよ。」

「ああ。今行く。」


 葎成はキリがいいところでパソコンから離れ、和食を食べたいという葎成の希望でおひたし、煮物、焼き魚、味噌汁、サラダを並べていた。


「うわすげぇ!美味しそう食べていい?」

「うん。」


 私と葎成は料理を囲み食事をする。


「絢は毎日こんな料理食べてんだな。羨ましい。これはなんだ?」


 胡瓜と人参と大根のサラダステック。胡瓜ステックを持ち私が作ったソースを指差す。


「これをサラダにつけて食べてください。ソースはマヨネーズと味噌と砂糖だけです。」

「マヨネーズ…。」


 胡瓜を持ちながらソースをつけるか迷っているようだった。


「マヨネーズ苦手なんですか?」


 葎成はちらりと見ると頷く。


「騙されたと思って食べてみてください。」


 恐る恐るソースをつけ口にする。


「うんめー!まじ?これなら食べれるわ。…本当羨ましい。」


 その後もソースをつけてサラダステックを食べていた。


「煜さんもそういう人に作ってもらったらいいのに。」


 葎成は急に食べる手を止める。


「絢桜。本気で言ってるか?」

「えっ?何か気に触る事いちゃった?」

「いや、何でもね。」


 その後美味しいと言いながら葎成はご飯を完食し、片付けも終わりお風呂を先に借りた。葎成がお風呂から出てくると同時にコーヒーを飲むか尋ねようとするが、葎成のお風呂姿に見とれてしまう。その姿は髪が濡れていて、上半身裸でしかも筋肉も付いていて引き締まった体だった。


「どうした?コーヒー淹れてくれるの?」

「あっ。はい。待っててくださいね。」


 慌ててコーヒーを淹れにキッチンに行く。


“何ドキドキしてんのやめてよ。”


 葎成を見てドキドキする自分がわからなかった。ソファに座りシャツを着てやっと私は心臓も落ち着いてきた。


“目の毒だ。”


 テーブルにコーヒーを持って行き、ソファに座ると携帯電話が鳴る。表示を見てすぐに電話に出る


「絢!」

「そんなに嬉しかった?」

「うん!」

「明後日、昼過ぎに空港に着くからそのまま家か、会社に帰る予定だがまだわからない。はっきりしたら連絡入れる。今どこだ?」

「えっと、煜さんの家。」

「えっ?葎の家?会社じゃなくて?」

「うん。そうだけど。どうしたの?」

「何でもない。葎いるか?変わってほしい。」


 携帯電話を葎成にそっと渡す。桜井が少し動揺している事が気になり葎成との会話に耳を傾ける。葎成はそれに気付き立ち上がる。


「絢か。どうだった?」


 会話する様子を見ると仕事の話をしているようだった。


「ところで絢桜は葎の家にいるのか?」

「ああ。今日はまだ落ち着いてたからな。それに毎日あそこだと体にも良くないしな。何心配してんだ。」

「葎の性格はわかってるつもりだが、手出したら許さない。」

「あははは。本当心配しすぎだって。まぁ、俺も反対の立場だったらそうだろうな。」

「葎。絢桜の事頼む。空港着いたら連絡入れる。」

「ああ。」


 葎成は電話を切り私に渡す。


「明後日帰ってくるってよかったな。今日はじゃぁパーティーでもしようか?」

「ご飯食べましたよ。」

「わかってないなぁ。俺はお酒を飲む。絢桜はジュースで乾杯!クリスマスだもんな。へんなペアだけどいいかもな。」

「へんなペアって何?」

「そうだな。例えば友達以上恋人未満ってとこかな。」


 そう言いながら冷蔵庫からジュースとワインセラーからワインを持ってくる。テーブルにグラス二つとワインとジュースが置かれる。


「なんか飲み物も友達以上恋人未満みたい。」

「あははは。」


 葎成はグラスにジュースとワインを入れ持ち上げ乾杯する。


「俺、幸せだな。クリスマスに女の子といるなんて。」

「煜さんは女の子たくさん寄ってくると思うけど。」


そっとグラスをテーブルに置く。


「金目当てでな。確かにいてないと言われるといるって言いたくなるし、いるって言われるといないって言いたくなる。」

「なんですかその答えにならない言葉は。」

「あはは。そうなんだよな。俺でも付き合った人はいるよ。けど俺はこういう性格だから長続きしない。というか寂しい思いさせるだけで結局は泣かせて終わりだ。」

「煜さんは泣かせたりしない。ただ行動と言葉がごちゃになって伝わりにくいだけです。私は何度も煜さんに助けられてます。煜さんは恋愛に怖がってるだけだと思います。きっとずっと一緒にいたい人できます。煜さんにできなくてもそんな煜さんの事わかってくれる女性がいるはずです。」


 葎成はグラスをテーブル置くと私を抱きしめる。


「煜さん?」

「ごめん。無理。」


 そのままソファに倒されキスをされる。かすかにするワインの味。そっと離れ葎成は私を見て驚く。


「絢…桜。その顔やめろ期待してしまう。…俺だって男だ。今だって絢に殺される覚悟だ。だけどなこれ以上は進めない。だからそんな顔するな。」

「私どんな顔してるんですか?」

「それ俺に聞くか?」


 傷のない腕の方を持ちそっと体を起こし先ほど飲んでいたワインを飲み始める。


「また絢しばかれるな。」

「あはは。」


 私はなぜか笑ってしまった。


「絢桜、笑うとこないぞ。あ〜俺も絢桜を女にしたい!」


 私は葎成に顔を緩めながら微笑む。


「ってかなんでそんな反応なの?意味わかってるのか?」

「意味というより煜さんが私を気に入ってるっていうのは絢から聞いてたから。出張行くのも不安だって言ってたけど葎に預けるほうが安心だって。私は恋愛経験が少ないからよくわからないけどキスって恋愛対象なるのかなって?私クロともするから。」

「お前らキスするのか?!」

「うん!」

「うんって。もしかして俺とのキスは古乃実と同レベルか?」

「また違うかな。クロとは頬同士チューだけどね。確かに端から見たらいけない事かもしれないし絢も怒るかもしれない。けど私は煜さんのする事否定できない自分がいるのは確実で。どうしたらいい?」


 葎成は今の言葉に初めて言い返さなかった。というより言い返せなかった。


「どうしたらいいだろうな。絢桜自身が決めたらいい。ただ忘れるな絢桜は絢の妻だ。俺に気を許すとかも良くない。確かに俺から手を出してしまう、だが受け入れるという事はそれが壊れてもいいという事だ。絢桜は絢と俺とだったら一緒にいたいって思うのどっち?」

「絢。」

「だろ。じゃぁ答えは出てる。だから俺が手を出そうとしたら避けるなどしないといけない。これからは避けろよ。じゃぁないと俺は絢桜をどんどん求めてしまう。」

「気をつけます。」

「おう。俺ならともかく他の男だったら俺でも許さないからな。あ〜絢が帰ってきたらしばかれる。」

「なんで?言わなかったらわからないけど。」

「絢桜。絢と俺の関係なめない方がいいぞ。絢は確実にわかってる。」

「なんで?」

「絢に聞け。」


 そう言うと葎成はワインを注ぎ一本をあっという間に空けてしまう。私はジュースを飲み葎成と何時間と話をし眠くなってきた私は先に眠りについた。


 桜井の帰国の日、残りの食材を持って葎成と一緒に会社にいた。会社の中では私がいる事に社員が噂をしていた。どういう言う関係なのかと。葎成は聞こえていても平気でいた。桜井を待っている間、社長室で雑用の手伝いをしていた、葎成はいいと言ったが、ずっと何もしないでいるのが嫌な私はお願いしてやっとこそで手伝える事が出来た。その時社長室にノックがなる。


「ハイ。」


 ドアを開けると桜井だった。私は嬉しくて手伝いの手を止めて桜井に飛びつくと桜井も私に抱きつく。


「お前ら社長室で何してんだ?」


 葎成はパソコンに向かいながら尋ねる。


「おかえり!」

「ただいま!」

「お前ら聞いてんのか!?」


 葎成は声を上げ私と桜井は笑い合う。


「葎、帰ってきた。絢桜の事助かった今度お礼する。」

「礼なんて別にいらん。結果さえくれたら。」


 桜井は私から離れ葎成に書類を渡し、その書類を持ちソファにすわり丁寧に一枚一枚見ていく。


「さすがだな。また忙しくなりそうだな。」


 葎成は嬉しそうな顔で書類を読み桜井は私に向き合う。


「どうだった?何もなかったか?」

「うん!ほとんどここでの生活だったけど、ベットにも寝れたからグッスリ。」

「そうか。次に葎。」


 葎成の座るソファに向き合い何かを探るような視線に気付き葎成は桜井を見る。


「何?」

「どこまでした?」


 葎成は書類の手を止めソファの背もたれに体を預ける。


「何もないとは言わせないぞ。」

「なっ何?どうしたの?」


 明らかに今にも喧嘩しそうな感じで怖くなった。


「やっぱな。キス以上はしてないから安心しろ。」


 桜井はあまり驚いていなかった。


「…何か飛んでくるかと思ったけど。」


 葎成はいつも言葉より先に行動がでる桜井が不思議だった。


「絢桜が受け入れたんだろ?それに絢桜自身嫌じゃなかったはず。」


 桜井は私に目線を送ると嫌な心臓の音が鳴り始め泣きそうな顔になる。桜井は私に微笑み、横に座るように手招きされるままゆっくりと座る。


「俺は葎を信じてる。もし絢桜がそれを受け入れてどんな理由でも先進む事があっても絶対手出さない事だってわかってる。」


 葎成は少しにやけながら微笑む。


「葎。本気で奪うなら受けて立つ遠慮はいらない。」

 

 桜井は真剣な目で葎成に宣戦布告する。


「絢。俺は前も言ったはずだ。俺が絢桜の事思っていたとしても女にはしない。泣かせるだけだ。俺も自分自身の気持ちにも驚いたけど、それ以上踏み出す事はできない。本当に奪いたいと思ってたら今頃奪ってるはずだからな。まぁ〜友愛で時には仁愛って事でっと。」

「葎。」

「俺は絢と絢桜が幸せならそれでいい。」


 葎成は桜井に活き活きした表情で話す。


「あのぅ?一体何の話?」


 私はゆっくりと手を挙げ葎成と桜井に尋ねる。


「絢桜の話だろ!」


 葎成と桜井は声を合わせていう。


「ですよねぇ。私そんないい女じゃないですけど。」


 葎成は私に耳を貸すように手招きすると、そのままテーブル越しに耳を葎成に近づけると急に顎を持たれキスをされる。


 ドス!桜井は葎成と私を離す。


「葎!」

「いててて。あははは。けど絢桜の顏。」


 桜井は私の顔を見て大きくため息をつく。


「葎。本当に容赦ない。」

「今のは攻略約束。」

「攻略約束?」

「今、絢桜は俺に敬語を使った。だからキスした。」

「意味がわからないけど。」


 私は冷めた口調で葎成に発する。


「さて俺は仕事に戻る。絢は休め。適当に出勤でいいから。」

「明日適当にくる。」

「わかった。あっそうそう冷蔵庫の持って帰ってくれ俺にはもう必要ねぇから。」


 葎成はそう言うと机に向かい、桜井から預かった書類を見ながらパソコンで仕事を始める。荷物と買い物袋を持ちそっと部屋を出て家に帰る。


「マイホーム!!」


 嬉しくて玄関に寝転んでしまう。


「あははは。絢桜、嬉しそう。」


 桜井は笑っているかと思えば私の手を取り体を持ちあげる。そのまま私をお姫様抱っこして寝室に運び、ベットに下ろし私は上から桜井に見つめられ赤くなる。


「絢桜。」


 桜井は私にキスをするが、いつもより深く熱いキスをする。


「絢桜。愛してる。」


 好きな桜井に愛してるという言葉を言われ胸にある気持ちが溢れかえって涙が流れる。桜井はそっと涙を拭う。


「私本当はすごく寂しかった。けど一つ謝らなきゃいけない。煜さんとキスしてごめん。正直キスされて煜さんにも言われたけど抵抗できなかった。」

「ああ。」


 嫌われるんじゃないかって思っていたのに、桜井はその反対に優しい顔で微笑む。


「大丈夫だから。絢桜きっと葎に寂しさをすがっただけだ。気にするな。」

「うん。」


 そのまま互いに額を合わせて見つめ合い微笑み合う。


「絢桜…眠い…。」

「へっ?」


 桜井は疲れていた為、気持ちもほっとしたのかそのまま私を抱きしめながら眠りについた。


「あっ。コッペパルパン!…後でいいかな。」


 すやすやと眠る桜井に布団をかけ桜井の寝顔を見ながら幸せをかみしめていた。




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