恋ベル17
「おはよう!」
井下が挨拶するが急ににやけ出す。
「なんかいい事あった?」
「どうして?」
「顔、にやけすぎ。」
井下は私のほっぺを伸ばしたり縮めたりする。
「いひゃい。」
「白状しな!」
やっと井下がほっぺから離す。
「交換日記しようと思って、昨日書いて机に置いていたのを見てくれて。それに久しぶりに朝一緒にご飯食べてきた。」
「惚気ね。」
「クロが聞きたいって言ったじゃん!」
「照れない照れない。でっ交換日記は書いてくれてたの?」
「まだ見てない。帰って見ようと思ってさすがに持ち歩きはマズイと思って。それと好きなキャラクターにパル君登場させておいた。今度ご対面させる。」
「あれねぇ。きっと絶句だと思うけど。社長さんの反応が見たいかも。けどなんやかんや言っていい夫婦じゃない?」
私は慌てて井下の口を手で閉じる。
「ごめんごめん。」
井下は私の押さえる手をしたまま話し私は手を離す。教室に入ると吉永の周りに女子が集まっていた。席が近い為女子が私と井下の机まで侵入していたが気にもせず席に着く。チャイムもなり担任の先生が来るがまだ吉永の周りに女子がいた。
「おい!チャイムなってるぞ!」
「はーい!」
女子は残念そうに教室から出て行く。
「出席を取るぞ。藍川。」
先生が出席を取っている間、私は交換日記の事で頭一杯で早く家に帰りたかった。昼休みになり私と井下は学校にある数少ない校庭のベンチに座ってお弁当を広げ食べる。
「桜井さん。シザのお弁当持っていってるの?」
「ううん。さすがにそれは無理かな。煜さんからは会社でも内密って宣言してるから。」
「?シザ…煜さんって誰だったっけ?」
「社長。」
「え〜!なんでなの?」
「なんとも言えない。約束約束ってそればかりで、けど煜さんがいるから私たちは一緒にいられてるみたいなもんだから。」
「なんかわかんないけどファイト!」
「一言だと思って。」
葎成は物のいい方からして冗談か本気かわからないけど特に自分の大事な人には凄く優しいと私はここ何ヶ月で気づいた。
放課後井下とカフェする事になり近くの店まで話しながら歩いていた。私は躓きコケかけたその時、横で散歩していた犬が突然の出来事にビックリし私の足首を噛み逃走する。
「痛。」
飼い主は謝って犬を追いかける。
「シザ大丈夫?」
「あっ。うん。」
私達は店に入り店の人に席に案内される途中で吉永に会う。
「あれっ?井梅と井下?」
私と井下は名前呼ばれた方に振り返る。
「吉永君?」
「席どうされますか?」
「一緒でもいいですよ。」
吉永は席を移動し横に座る綺麗な女の人に笑顔で言われ、私達は顔を見合わせるとゆっくりと席に座る。
「あの?」
「あっ。俺の姉貴。」
「お姉さんですか?顔が似てない。」
私と井下は声を合わせて尋ねる。
「お前ら。」
吉永は膨れ顔を見せ私と井下をジロリと見る。
「純也、紹介して。」
「俺と同じクラスの委員長の井梅と井下。」
「委員長さんなんだ。みんなに慕われてるんだね。」
「慕われるというより俺には鬼だけど。」
「それは吉永君が問題起こすからでしょ?毎度毎度呼び出される私の身になってみてって感じ。」
「ふふふ。けど純也は家では大人しくて想像つかない。」
「そうなんですか?!」
私と井下は声を合わせて答える。
「お前らそんな俺、問題児か?」
「自覚してないの?問題児も問題児。」
井下は吉永に普段の鬱憤を言う。
「吉永君はお姉さんとカフェ?」
吉永は姉を見て恥ずかしそうな顔をする。
「たまにこうやって話すんだ。俺たち姉弟でも血が繋がってなくて、いろんな事家で話すよりここの方が落ち着くから。」
「そうなんだ。」
「二人とも可愛いね。彼氏はいるの?」
井下は私を見る。
「委員長はいるよね。詳しくは聞いてねぇけど前にたまたまそういう話になって年上の彼氏がいてるってだけ聞いたような。ってか委員長可愛いか?」
「ぶっ飛ばしていい?!」
私はグゥのポーズをつくり吉永に向ける。
「いいよぉ〜!」
私の発言に井下は了解ポーズを見せる。
「純也、酷いよ今のは。彼女眼鏡かけてるけど取ったらきっとすごい美人だよ。」
「外して。」
「お断り!」
吉永は私の眼鏡を取ろうとするが私は手を払う。
「本当楽しそう。私も高校生活またやり直せたらいいのな。ってごめんごめん。」
“確か前吉永君お姉さんは高校の時自殺未遂したって言ってたような…。”
「何かあったのですか?」
「私ね、高校の時付き合ってた彼がいたの。彼がどうとかではなくて彼と付き合ってた私が彼の彼女には相応しくないって、嫌がらせに耐えなくて自分の勝手な行動で自殺未遂しちゃって。彼にも迷惑かけてしまって。最低でしょ?」
私と井下は何も言えなくなる。
「しんみりすんなよ。こんな姉貴だけど三月に結婚するんだから。」
「そうなんですか?おめでとうございます。」
私は手を軽く叩きながら吉永の姉に言うと井下も一緒になって叩く。
“って私はもう結婚してます。って言えないしね。”
「その彼はすごくモテてたのですか?」
「うん。高校一だったから。二人居たんだけどその彼たちは仲良くて他の男たちも引き寄せないくらいズバ抜けてかっこよかった。」
「見てみたい。」
「シザも思わない?」
「思わない。」
「言うと思った。」
「本当に男には容赦ないね。」
「本当見てて楽しくなるね。純也もいいクラスでよかったね。」
「おう!」
吉永は姉の前では素直になるみたいだった。色々と話していると腕時計の針が十八時を指していた。
「あっ。帰らないと。」
立ち上がると同時に電話がかかってきた私は電話に出るため席を外す。
「彼氏?」
吉永は親指を立てながら井下尋ねる。
「だと思うよぉ〜。」
「俺、委員長の彼氏見てみたい。」
「見ないほうがいいよ。きっと吉永君シザ彼氏見ると凹むよ。」
「なんで?」
「吉永君より数倍かっこいいから!」
「はぁ!?年上って言ってたよな?」
「シザとは十三歳差かな。」
「え〜!!マジポん!?」
私が戻ってくると吉永私を見る。
「何?」
「なんでもない。」
「彼?」
「あっ。うん久しぶりに外で食べようって二十分ほどでこのお店に着くって。クロも行くよ。」
「えっ?私も…って彼もついてくるって事?」
「多分ね。電話の後ろから叫んでたから。」
「あはは。ゴチになります!」
私と井下の姿を見て吉永の姉はクスクス笑っていた。暫くして電話がかかり店から井下と店を出る吉永もついてくる。
「…どうして吉永がいるの?」
「確認確認!」
井下と吉永が言い合いをしていると。
「よお!」
葎成の声に私と井下は手を挙げ、吉永は二人を見ると絶句していた。
「だから言ったのに!」
井下は吉永の顔を見て肘で横腹を突く。
「マジかっけぇ。どっちどっち?」
「左。」
「委員長やるねぇ。俺、見習わないと。」
「何それ?」
私達が吉永と盛り上がってると葎成は近寄ってくる。
「何々?ってか誰?」
「あっ。クラスメイト吉永…。」
「純也!鞄持って行ってよぉ〜!!」
「あっ。忘れてた。」
吉永の姉は彼達を見ると鞄を落とす。
「絢…君」
吉永姉が言うと桜井は目を開く。
「
一瞬何が起こったのかわからなかった。ただこの先の言葉が浮かんで見えた。吉永の姉が付き合ってた彼が桜井だったって事。私は突然の事にわけわからなくなり、急に苦しくなり胸に手を当て制服を強く握る。
「絢桜!今日は絢桜の大好きなパイナップルだぞ!」
葎成は私の肩に手を置きそのまま歩き出す。
「絢!先行ってるぞ!古乃実行くぞ〜!」
私達は歩き出したが自分の足取りがわからなかった。
「絢桜。顔と行動拒絶反応ですぎだから。絢は大丈夫。」
葎成は私に優しく微笑みながら話す。
「うん。」
「今日の絢桜、素直だね。明日雨かな?」
「それはどういう意味で?ってか手どいてください。重いです。」
私の肩にある手を振り払う葎成はまた乗せてくる。
「ど突かれたいですか?!」
「あははは。嫌だ!!じゃ古乃実に!」
「結構です!」
井下もハッキリ返す。
「俺、マジで君たちに嫌われてるんじゃないの?!」
そんなやり取りを桜井は見て微笑み吉永の姉に振り返る。
「元気だった?」
「うん。絢君は?」
「俺も元気だった。」
「委員長さんが彼女だったんだ。」
「委員長?」
「俺のクラス委員長、井梅さん。姉貴。俺、先に帰ってるから。」
吉永はそう言うと手を挙げて帰っていく。
「うん。わかった。」
「弟いたっけ?」
「親が再婚で。」
「そっか。俺の彼女、今でわかったんだ。」
「分かるよ。絢君ずっと見ていたから。彼女かわいくて話してても凄く楽しかった。」
「ああ。彼女といるとなんでも楽しい。」
「けど高校生だよね?」
「ああ。けど俺には関係ない。」
「うん。私ね結婚するんだ。私も幸せになるから絢君も幸せな日くる事願ってるよ。」
「おめでとう。俺は…結婚してる。」
「えっ?…彼女と?」
「ああ。弟には言わないでほしいが俺と彼女は夫婦なんだ。」
「言葉が出てこない。ふふふ。けど絢君が幸せなら私も幸せだから。じゃぁまたどこかで。」
「ああ。」
吉永の姉は手を振って帰っていく。桜井はすぐに振り返り私達のいるお店まで走ってくる。その頃葎成に連れてこられたお店で。
「絢桜。凄く機嫌悪いよなぁ。」
「ですね。」
私はむしゃくしゃしてご飯を黙々と食べてはその姿を見て葎成と井下は唖然とした顔で私を見ていた。その時桜井が来るが葎成は桜井に機嫌が悪い事を伝える。
「遅くなった。」
桜井は後ろから私を抱きしめるが、その行動に誰もが驚く。
「やるねぇ。」
私は食べていたもので噎せてしまう。
「げほげほ。」
「大丈夫?」
「じゃない。」
今にも泣きそうな顔して桜井を見ると桜井は私の頭を撫ぜ微笑む。
「俺は絢桜だけだから。」
「なんか、俺たち帰りたくない?」
「うん同感。」
「葎も井下さんも折角な時間ごめん。」
「解決したのか?」
「解決も俺らは終わってる、ただ互いに気遣ってただけだからそれを話してきた。彼女も結婚するみたいだし。」
「そうなのか?」
「吉永のお姉さん結婚するって言ってた。綺麗だったよね。」
葎成は井下のコツリと頭を叩くと井下は葎成の頭をゴンと叩く。
「いて!力加減!」
「本当綺麗だったよ。」
「聞いてないし…。」
“本当に綺麗だった。高校の時はきっともっと可愛かったんだろうな。”
その時目の前にパイナップルが沢山置かれ目を輝かす。桜井はどうぞと口パクしながら言い私は嬉しくてパイナップルを食べ始める。
「やっぱ、俺たちいない方がよくねぇ。」
「うん。帰りたくなってきた。」
「クロ食べるよ!」
「ラジャー!」
私の声と共に井下はいきなり食べ始める。
「今帰りたいって言ってたやつどこだ?」
「ここ!ここ!」
井下は自分で自分を指で差し、葎成は飲んでいた飲み物を吹き出しながら笑っていた。盛り盛りとご飯を食べマンションに帰ってくる。帰ってきて部屋に鞄を置き、お風呂に入るために着替えを抱えリビングに向かう。桜井はスーツのままソファで寛いでいた。
「絢。先にお風呂入っていいよ。」
「ああ。じゃぁ先に行ってくる。」
先に桜井が入りその後にお風呂へ行き、私が出てくると桜井はソファに座るように手で合図する。そっと座ると急に抱きしめられ桜井の手の上に手を置く。
「今日はごめん。俺と絢桜は互いに知らない事沢山あると思うけど絶対傍にいるからそれだけは忘れないでほしい。」
「うん。」
暫く抱きしめ合いそのまま手を繋ぎ、引っ張られるように寝室に行くと桜井が上に覆いかぶる。そっと私に優しいキスをする。
「今はキスだけだけど…もしかしたら限界で絢桜を抱いてしまうかもしれない。そうなった時、絢桜は俺が怖いか?」
首を振ると桜井は嬉しそうに微笑み私にキスをし抱きしめる。
「ありがとう。絢桜。」
嬉しくてその夜は桜井と手を繋ぎながら一緒に眠り私は幸せな夢をみた。
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