恋ベル16
母の引っ越しの日になり、前の日に来てある程度の準備を終えると夜は一緒の布団に入り、親子の最後の日を過ごしていた。
「お母さん。一人にしてごめんね。」
「何言ってんの?お母さんはね、絢桜が幸せでいてくれたらそれで充分。それにね結果としてお父さんと別れたけど一緒にいた時間は本当に幸せだったよ。それだけはきっと忘れないと思う。たとえ互いに違う道進んでいてもね。」
「もし、桜井さんと」
「絢桜の不安もわかるよ。一番に大切なのは自分の気持ち、大事にしないと壊れるのも時間の問題。夫婦はね、一人の人間なんだし考え方も違うし解り合おうなんて無理な事。だけどね互いに許しあう事はできるよね。無理に幸せになろうとしないでゆっくりと時間かけていくと自然ときっと幸せの答えにたどりつくんだから。」
「うん。いつか私もその想いに気づくのかな…。」
「絢桜は今幸せ〜って感じだけどね。きっといろんな出来事あると思う。逃げ出したい時もあると思う。だけどね絢桜には強い味方いるんじゃない?どうしてもってなったら頼ってみてもいいと思うよ。」
「クロ…。」
「社長さんだよ。」
「へっ?!」
「初めて会った時、桜井さんもだけど若くてしっかりしててかっこよくてもう女性が絶対手にれたいナンバー1だって思ったの。」
「いやいや。お母さん。話しがちょっと違う…。」
「そう?けど絢桜、素直になる事だよ。桜井さんにはきちんと話すこと分かった?」
「はい。」
「さて。明日も忙しそうだし、この家の最後の夜に一緒に寝よう。」
「うん。」
母と横に並び小さい頃楽しくて笑顔で暮らしていた夢をみては微笑みながら眠った。
朝になり引っ越しのトラックが来て荷物を運び私はタクシーに乗る母を見送っていた。
「じゃぁ。行くね。たまには電話してきてね。何かあったら桜井さんと社長さんに頼るのよ。お母さんは後でいいからね。わかった?」
「うん!…社長さんって……。お母さんも無理しないでね。元気でね。」
私は涙を浮かべながら溢れないよう必死にこらえる。そこに桜井が走ってくると母はタクシーの運転手に少し待ってもらうようにいい車から降りる。
「桜井さん。絢桜をよろしくお願いします。」
母は深々と頭を下げる。
「ハイ。」
桜井は返事すると母は笑顔でタクシーに乗り、手を振って旅立っていった。その瞬間に涙が流れ桜井はそっと抱きしめる。
「絢桜。声出して泣いていい。」
その言葉のまま私は桜井の胸で溜めていた心の内を声に出して泣いた。桜井は頭を撫でては抱きしめ、泣きまくった私は桜井と共にマンションへ帰り私はそのまま洗面所へ行く。顔を見てすぐにタオルを濡らしてはソファにもたれながら目に当てる。
「どうした?」
「目が腫れちゃって。」
桜井は横に座り私の手からタオルを取り上げ頬に触れ微笑む。
「沢山泣いたからだな。」
桜井は私をそっと抱きしめる。
「俺は絶対に絢桜から離れないから覚悟しろよ。」
「…なんか桜井さんらしくない台詞ですね。」
「…だな。」
桜井は少し恥ずかしながら私から離れるが今度は私が桜井に抱きつく。
「私、桜井さん大好きです。」
桜井は微笑みまた私を抱きしめる。
「絢桜。俺の名前呼んで。」
「えっ?名前?…け…ん。」
「ああ。」
強く強く抱きしめられ恥ずかしながらも私は勇気を出して名前を言う。
「絢。」
「絢桜。」
周りから見たらバカカップルのように私達は暫く名前を呼び合いながら抱きしめ合ってた。目の腫れが引くと桜井はソファから離れ紙袋の中身を出し私の膝に携帯電話を置く。
「連絡取れないと困るから契約してきたこれでよかった?」
そっと受け取り初めて持つ携帯電話をぎゅっと握る。
「えっ?いいの?」
「ああ。」
嬉しくて携帯に触れると私は画面を見て絶句する。
「あっはは。これはまさかの。」
「俺の写メらしい。」
「らしいって。」
「サインする代わりに俺がする事は絶対とか言って勝手に。」
「さすがに恥ずかしい気がするんだけど。嬉しいからこのままにしておこ。」
「えっ?俺も恥ずかしから変えていいよ。」
「ううん。見られても彼氏って言えばいいから。」
「彼氏?」
「ごめん。旦那様です。」
「いやいいよ。高校生の会話に彼氏のほうがあってるし。」
桜井は嬉しそうに笑い次にちっさな箱を出す。それを手に取って開けると指輪だった。
「婚約指輪。本当は結婚する前なんだけど。…絢桜。俺と結婚してくれますか?」
嬉しくてまた涙が溢れ桜井はそっと涙を拭う。
「ハイ。私は絢とずっと一緒にいます。」
「ありがとう。」
「それからこれは俺からのプレゼント。」
また箱を渡されそっと開けるとまたもや指輪だった。
「結婚指輪ほどではないけどペアリング。式挙げた時にまたその時で用意するつもり。今はペアリングで我慢してもらえる?」
箱パレードに嬉しくて桜井に飛びつき、そのまま倒れこむ。
「嬉しい。私大事にする。大好き!幸せすぎだよ。」
桜井はそっと私を抱きしめそして起き上がる。そのまま見つめ合い私はドキドキと心臓の音が大きくなってくる。桜井は私の顔に近づけそのまま私は目を瞑り口づけ交わす。暫くして唇が離れ目を開けると桜井の顔が目の前にあり赤面する。また抱きしめられ私はすごく幸せすぎてとても怖かった。
毎日が幸せな日々も桜井は仕事で遅くなる事が多かった。今まで一人でも感じなかった寂しい気持ちに私はその不安と戦っていた。学校でもため息の日々だった。そんな井下は私の背中を叩く。
「何かあったの?」
「ううん。寂しいだけ。」
桜井が用意してくれた携帯を眺める。
「へぇ。そんなに待ち受け見てて?けどシザが寂しいって思うんだ。」
「クロ案外ひどいね。本当にこの不安どうしよう。」
「彼に言ったらいいんじゃん。甘える事だって悪い事じゃないよ黙ってる方がかえってギクシャクすると思うよ。好きな人ができると誰でもそうだよ。その色に染まってどうしようもなくてそこから抜けられない。」
「例えが難しすぎる。」
私はため息をつくと井下はそっと手を握る。
「彼なら大丈夫だから。軽はずみな気持ちはもっとうにないと思うし自信持ったら?」
「うん。そうだね。」
「あ〜私もそのスマホ欲しい。」
「いいでしょう?」
互いに笑い合い井下によって元気づけられ桜井に何か気づいてもらえるように何かしようと学校帰る間ずっと考えていた。そしてある事を思いつき家に着くと自分の部屋に置いてある箱からノートを取り出す。ノートを開け私はそのノートに書き込む。書き込んだノートを桜井の部屋の机に置いた。午後十一時になっても桜井はまだ帰ってこない。私は待ってるのに疲れ寝室で寝てしまっていた。時刻の日が変わった時桜井は帰ってくる。帰ってくると真っ先に寝室に眠っている私の様子を見に来る。そっと私の頭を撫ぜ微笑み暫くして部屋に入り、机に何か置いてあるのを見つける。桜井はノートを手に取る。
「交換日記?」
小学校の時によく友達と交換日記をしていた。質問が書かれそこに記入するだけのノート。そのノートに私は想いを綴った。桜井は私の書いてる内容を立ちながら読んでいた。
「自己紹介。桜井絢桜は妻で現在は井梅絢桜、高校生。誕生日は一月十八日。血液型B型。年齢十六歳。彼氏兼主人 桜井絢。初彼。初婚。好きな食べ物はパイナップル料理。好きな飲み物はブラッドオレンジ。好きな色は特に白と黒。好きなタイプは桜井絢。好きなキャラクターはパル君。…パル君?誰だろ?…最近の気持ちは不安。ほとんど俺が関わってるあはは。絢桜不安なんだぁ。内容書いてないけど。」
桜井はそっと机に交換日記を置き、私が作った食事を食べ入浴をし机に向かい交換日記を書く。
ピロリン。ピロリン。目覚ましで起きると横に桜井がいた。まだ慣れないため朝は毎日ドキドキな気持ちで起き洗面所に向かっている間、昨日の交換日記の事を気にしていた。
「読んでくれたかな?そのまま寝てたら見てないんだろうけど。はぁ。」
溜息をつき顔をバシャバシャと洗いすっきりすると朝食を作り始める。暫くすると桜井が起きて私のいるキッチンにくる。いつもバシッとしたイメージと違って寝癖のついたリラックス姿を見て私は毎日ときめいていた。
「おはよう。」
「おはよう。もう起きて大丈夫なの?」
「ああ。」
桜井はダイニングテーブルの椅子に座るが明らかに眠たそうだった。桜井は私を手招きして呼ぶ。桜井の所に行くと膝の上に座らせられるが心臓が朝から飛び出しそうだった。後ろから抱きつかれて、暫くして交換日記を出される。
「書いといた。ちょっと恥ずかしかったけど俺のいない所で読んで。」
「本当に?ありがとう!」
嬉しくて桜井に向き抱きつく。
「久しぶりに一緒にご飯食べようかな。」
「うん!用意するね!」
「それよりパル君って何?」
パル君とはパイナップルキャラクターで喋るマスコット。
「へっ?あ〜今度ご対面させてあげる。」
「…。楽しみにしてる。なんだろう?」
桜井は私の好きなキャラクターの名前を口にしては色々な想像しては話ししていた。朝から嬉しいことあり嬉しすぎて思わずスキップをしてしまう。桜井はその姿を見て笑い、久しぶりに一緒に食事をして私はテンションがハイの状態で学校に行く。
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